2016年6月定例市議会 小林よしかず議員
議案第103号工事請負契約の締結について--防災市民センター消防庁舎整備第Ⅰ期建築主体工事、これを可決すべきものとする総務委員長報告に反対の立場から討論
◆小林義和
27番、日本共産党長野市会議員団小林義和でございます。
議案第103号工事請負契約の締結について--防災市民センター消防庁舎整備第Ⅰ期建築主体工事、これを可決すべきものとする総務委員長報告に反対の立場から討論します。
私ども市会議員団は、これまで一貫して議会、都市計画審議会等で長野盆地西縁断層帯直上の中央消防署建設計画について、様々なリスクを指摘し、中央消防署移転改築事業、防災市民センター改築事業等による中心市街地の消防体制の再編成計画、この抜本的な見直しを求めてきました。
私は、平成26年11月、平成27年1月、集中審議された都市計画審議会で勤労者福祉センター跡地への中央消防署建設という一団地の官公庁施設の変更という都市計画決定に反対しました。
さきの一般質問でも触れましたので、以後の詳細は都市計画審議会議事録に任せるとして省略しますけれども、当時、理事者の答弁の要点は、長野市は県とは別の資料で判断している。地震発生確率から見て、この断層は被害想定する断層になっていない。防災マップ作成時もそのようにやっている。現行中心市街地消防体制を強化するためには、利用が決まらない勤労者福祉センター跡地が最適。この土地の利用については、管財課所管の長野市未利用地検討委員会で平成19年から検討しているが、都市計画の利用制限がされているため、なかなか利用が定まらず時間が経過し、今回のような提案に至った等でありました。
当時の都市計画審議会で反対した委員は、私を含めて2名であります。
その後、この地震発生確率、そして勤労者福祉センター跡地利用、これを旗印としてこの計画は進められていきました。今年、長野市は2月に長野市地域防災計画を修正し、4月に長野市耐震改修促進計画を改定しました。その直後、4月、多くの自治体庁舎を初め防災拠点が全壊、半壊し、機能停止した熊本地震が発生し、6月10日には政府地震調査委員会の全国地震動予測地図2016年版が公表されました。
しかし、長野市は平成26年11月、中山間地域や長野盆地西縁断層帯周辺に甚大な被害をもたらした直下型長野県神城断層地震を経験し、最新の知見を集大成した長野県地震被害想定調査報告書は、既に昨年3月6日に公表されておりました。
内容の詳細は、これも省きますが、この報告書の調査目的は長野県神城断層地震のような活断層による地震、東北地方太平洋沖地震--東日本大震災のことです、このように想定していなかった場所、規模の地震、将来起こり得る南海トラフ巨大地震に備えるため、県、市町村、地域の防災対策の基礎資料となる実践的な新たな被害想定を策定するためとされていました。
当時のマスコミ報道でも、新たな想定を踏まえ、県や市町村では今後、広域被害を前提にした防災計画の見直しや建造物の耐震化推進などの対策が急務となると警鐘を乱打していました。
しかし、現在の指針となっている最新の長野市地域防災計画修正版も4月改定の長野市耐震改修促進計画も、地震規模、被害状況の根拠は平成22年度長野市防災アセスメントに置いたものであります。
これもさきの質問で紹介した平成22年度長野市防災アセスメントと県の報告書を比較しますと、最新知見を集めた長野県地震被害想定調査報告書の方が甚大な被害を想定しています。
残念ながら、最新の現行長野市地域防災計画は最新のデータも知見も反映していない計画のまま現在存在し、実行されているということになるのです。
長野市が活断層上に中央消防署を建設するという最大の根拠とした地震発生確率について、最近の知見はどうなっているのか調べてみました。
文部科学省の地震調査研究推進本部は、長野盆地西縁断層帯は2つに分かれていまして、飯山-千曲区間は30年以内の発生確率は、ほぼゼロパーセントですが、麻績区間は不明とされています。地震発生確率値の留意点として、1、年数経過、新たな知見で変わる不確定さを含む。2、活断層地震は発生間隔が数千年程度と長い、30年程度の確率値は大きくはならない。0.02から8パーセントだった阪神・淡路大震災や東日本大震災は値が小さくても地震が発生したとの見解を示しています。
つまり、地震発生確率論の算定根拠となる科学的知見はいまだ不十分、それが今、この国の現状であります。
6月10日、全国地震動予測地図2016年版の発表を報じた新聞によりますと、地図を作成した東京大学地震研究所所長で東海地震判定会会長でもある平田直地震調査委員会委員長は、確率が小さく見える地域でも一たび大きな地震が発生すれば、強い揺れに見舞われる。熊本地震を教訓に建物の耐震化をと述べています。
また、氏は月刊誌世界7月号でも、検証熊本地震、内陸の浅い地震が問いかけるもの、という論文で次のように指摘しています。
日本では、残念ながら、どこでも熊本地震のような内陸の浅い地震の発生する可能性がある。これは阪神・淡路大震災の経験後強く認識された。日本には約2,000の活断層があり、地震調査委員会は、このうち約100の主要活断層を評価した。熊本地震布田川断層帯布田川区間では、30年以内の地震発生確率はゼロから0.9パーセントだった。地震への備えを進めるにはどのように科学的知見を伝えるべきか、改めて考え直す必要がある。
全国の学校や公共施設の耐震化を一刻も早く進めて、耐震化率100パーセントを実現すべき、住宅の耐震化率も100パーセントにしなければならない。ただし、今回の地震では震度7が28時間を経て二度襲った。このようなことは今後、考慮されなければならない重要な教訓だ。
新潟大学名誉教授の立石雅昭氏は、月刊誌前衛7月号で、二度の大きな揺れに見合う耐震性の検討についてと題して、熊本地震では耐震基準が2000年以降に建てられた木造家屋の全壊例が50戸以上あること。特に防災拠点とならなければならない役所や病院、学校が被害を受けており、指定避難所が70か所も使用不可能となったなど、耐震設計上の新たな問題が提起されていると指摘しております。
全国地震動予測地図について、昨年3月、長野県地震被害想定調査報告書をまとめた長野県地震被害想定検討委員会委員の一人である信州大学教育学部の廣内教授は、糸魚川--静岡構造線断層帯北部が震源だった長野県神城断層地震が想定より小さかったため、今回の地図に影響が考慮されなかったことに対して、県北部のこの地震は地表が大きく動き、生活に被害を及ぼしたと指摘し、経験した地震を反映させ、小さな地震を無視しない評価方法の検討が必要と問題提起しています。
長野市危機管理防災課も新聞のインタビューに答えて、数値が小さくても安心できるわけではないとコメントをしています。
そこで、次に重要となる活断層上の建物の建設の回避について、朝日新聞が幾つかの事例を報じていますので、紹介しておきます。
1つは、平成24年、四日市市の河原田小学校が新校舎建設予定地に活断層が発見され、敷地の東西で地層に大きな違いがあることが判明したため、直ちに建設位置を変更し、予定地はグラウンドにしたのです。真剣に自分の命を守る行動を考えて、活発な地域運営の避難訓練等に今、この経験は発展をしています。
中央構造線断層帯が横断する徳島県は、平成24年全国で初めて徳島県南海トラフ巨大地震等に係る震災に強い社会づくり条例を制定しました。地震30年発生確率はゼロから0.4パーセントと極めて低いが、発生すれば被害は甚大として、特定活断層調査区域を指定し、多数の人が利用する建築物、危険物を貯蔵する施設の新築、建て替え時には活断層の位置を確認し、その直上を避けて建築させるという内容で、愛称は、命を守るとくしまゼロ作戦条例とのことです。
アメリカカリフォルニア州は、ご存じのとおり、1971年カリフォルニア大地震を機に、活断層ゾーンの設置や土地開発時の地質調査、一定範囲内での小規模住宅以外の新規建築を禁止する活断層法を定めています。
ニュージーランド政府は、2004年に活断層対策の指針を出して、危険度や建物の重要度に応じて土地利用を規制することを自治体に求めています。
これらの事例から、活断層と土地利用規制に詳しい山形大学の村山良之教授--地理学は、地震振動への対策は、耐震建築や補強が有効だが、活断層対策は断層上での建築を避けることしかないと断言していると報じています。
以上、言及しましたけれども、地震発生確率論の問題や活断層上への建築回避という問題における多くの専門家の指摘や全国の自治体や外国の先進事例から見ても、断層地震列島の日本においては、少なくとも防災拠点施設をあえて活断層直上に建設するような暴挙は行わない。これは異論の余地のない当然のことではないでしょうか。
私は、長野盆地西縁断層帯が少なくとも2回動き、断層の両側に約5メートルの段差を与えたという痕跡、地層がはっきりと確認できる勤労者福祉センター跡地とひまわり公園を一体化し、1847年善光寺御開帳の最中に発生し、8,000人以上の死者と3万余の家屋の倒壊、6万か所を超える崖崩れや液状化などの地盤被害を記録したマグニチュード7.4の善光寺地震の実相と活断層について、市民や子供たちが学習できる長野市民防災記念公園、緑地帯として未来につなげることこそ、今日の地震時代を生きる私たちに求められていることではないでしょうか。
未来の長野市民に当時の市議会と市長は正しい決定をしたと言われるように、改めて活断層の市民周知、建設制限等の先進事例の検討なども含めて、まだ間に合います、無謀とも言える中央消防署建設のストップ、長野市地域防災計画の見直しの中で、防災拠点の中枢中の中枢である現行の消防局があり、中央消防署、防災市民センターがある一帯の整備、そして現に勤労者福祉センターの北西に位置して機能している西長野分署の拡充、強化などを含めて、新たな消防体制の構築として再検討されるよう強く要望し、総務委員長報告への反対討論を終わります。