2015年12月定例市議会 黒沢清一議員2
請願第38号TPPから「食」と「いのち」と「くらし」を守る請願を採択すべきとした経済文教委員会副委員長報告に賛成の立場で、補強意見を述べながら賛成討論
◆黒沢清一
日本共産党長野市会議員団黒沢清一です。
請願第38号TPPから「食」と「いのち」と「くらし」を守る請願を採択すべきとした経済文教委員会副委員長報告に賛成の立場で、補強意見を述べながら賛成討論を行います。
TPPは、12か国の交渉が大筋合意したといっても、まだ協定の全文も確定せず、参加国の署名や批准の見通しもはっきりしていません。
そんな中、安倍政権がいわゆる対策を打ち出しましたが、これは、国民の不安や懸念に応えず、協定の中身が国民に知られないうちに、都合のよい宣伝で協定への署名や批准を進めやすくして、来年の参議院選を乗り越えようという、正に党利党略であります。
安倍内閣は、TPPの交渉の大筋合意を受けて、総合的なTPP関連政策大綱を決めました。今年度の補正予算や来年度予算編成に反映させるとしています。中堅・中小企業を後押しする新輸出大国やTPPを通じた強い経済の実現、TPPで大きな打撃を受ける農業に対する農政新時代の提唱などです。具体的な対策は、来年秋までに詰めるという、裏付けのないスローガンの羅列です。秘密交渉で大幅に譲歩した大筋合意の全容も明らかにせずに、政府が情報を独占したまま、対策なるものを打ち出すのは極めて不当です。
取り分け大きな被害を受ける農業分野では、米など重要5品目について、関税の撤廃や引下げを認めず、それができなければ交渉脱退も辞さないという、国会決議に基づく交渉だったはずです。
安倍首相や官邸筋が国会決議を守ったと言い繕っていることに対して、全国の農業団体からも怒りが起こっています。
今回、経済文教委員会へ提出される予定の請願文書には、当初、国会決議や与党決議を大きく逸脱したものであり、断じて容認することはできませんの文言が記載されていました。
しかし、これが経済文教委員会へ提出された段階で削除されてしまい、大変残念でした。
こういう中で、国の安倍首相や閣僚からは、国会決議が守れなくて申し訳ない、こういう謝罪の一言もありません。首相を初め閣僚がうそをつくというのは、教育上どうなんでしょうか。来年から18歳選挙権で生まれる新しい10代の有権者は、どう思うのでしょうか。これでは政治不信をますますひどくするだけではないでしょうか。
ですから、その決議が守れたか、国会できちんと検証すべきであります。野党がそろって要求した臨時国会も開かず、一方的に対策を打ち出すのは、国会無視、国民無視の表れであります。
安倍政権と農林水産省は、農林漁業分野でもTPPの影響は限定的として、楽観的な見通しを示しています。その上、大綱では、大量の輸入拡大を約束した米については、備蓄対策の改善で国産に影響させないとしています。こうした当面の対策を打ち出しただけであります。そもそも、こうした対策をとること自体、予想される被害の大きさを示すものであります。5項目以外の関税撤廃品目や影響が大きい中山間地域の対策は無視、又は先送りです。
長野市は中山間地も多く抱えていて、大規模化やコスト削減には限界があります。
安倍首相は、美しい田園風景、伝統あるふるさとを守ると言います。しかし、誰が現場を守っているのでしょうか。美しい棚田や田園、果樹風景を守るために、地域ではどれだけ苦労しているのか、安倍首相は分かっているのでしょうか。
政府の大綱、今までの政策の範囲内で、輸出に挑戦する意欲のある担い手に対策を集中するものであります。自民党、政府が進めてきた輸入自由化と一体の構造改革の一層の表明でしかありません。
果樹専門農協の共和園芸農協は、取り分け果汁関税撤廃に危機感を持っています。集荷、販売のほとんどを占めるリンゴは、共和ブランドとして、海外産に負けない自負を持っています。しかし、果汁となる規格外品は、行き場を海外産に奪われかねません。しかも、最近は天候不順で、夏の高温やひょう害などが近年頻発しています。今年も実際に信更地区で、ひょう害によって大変な被害を受けました。規格外品の出荷先がなくなれば、品質の低い果実も市場に多く出回って、全体の販売価格を押し下げる可能性もあります。
農林水産省は、国産の果実は、高品質で国際的な競争力があり、果汁も、安価な海外産と国産の高級品とは差別化が図られるとして楽観的です。しかも、リンゴ果汁は輸入元の大半が中国のため、影響は少ないとしています。しかし、それは机上の論理で、影響は計り知れません。これが生産現場の声であります。
農林水産省が発表した農業速報値によると、日本の農業人口は、2010年からこの5年間で51万6,000人減少しました。家族経営と地域農家の困難を示しています。
国内農業を更に破壊するTPPの押し付けは、やめるべきであります。今、必要なのは、TPP大筋合意と協定案の全体、交渉経過などの情報を全面的に公開し、国会、国民の中で徹底的な論議を行うことであります。国会決議に違反していないか、日本の経済と国民の暮らしにどう影響するのかを検証し、協定への署名、批准を阻止すべきことを述べて、賛成討論といたします。