2014年12月定例市議会 小林よしかず議員
議案第百三十三号長野市立公民館条例の一部を改正する条例を可決した経済文教委員会委員長報告 反対討論
◆小林義和
議案第百三十三号長野市立公民館条例の一部を改正する条例を可決した経済文教委員会委員長報告に反対の立場で討論いたします。
当委員会が可決した条例案は、長沼公民館を指定管理者に委託することに伴い改正された公民館条例を、やはり本議会に提案された平成二十七年度から芋井公民館、篠ノ井公民館外七分館、信更公民館外一分館を指定管理者に委託する議案と関連して、今後更に指定管理者委託を拡大する方針に沿って、第四条、第七条について、その都度個別の公民館名を記載しなくてもいいように、指定管理者が管理する公民館という表現にして、全面的に指定管理者制度に移行していくための整備をしたものだと考えております。
さらに、第十条を新設し、成人学校の受講料を指定管理者に支払うこと、そしてその受講料を指定管理者の収入にして収受させること等を規定、つまり利用料金制を明確にしたわけであります。
第十三条では、指定管理者に委託した公民館には、公民館運営審議会を設置する必要がない旨を規定するなど、重大な改変を行うことになったわけであります。
そもそも二〇〇三年の地方自治法改正によって、公の施設の管理受託者を民間事業者にまで拡大する指定管理者制度が導入され、社会教育における市場化、民営化の流れも急速に強められてまいりました。文部科学省は、二〇〇五年一月二十五日に全国主管部課長会議で、社会教育施設における指定管理者制度の適用についてという文書を出し、公民館、図書館及び博物館の社会教育施設については、指定管理者制度を適用し、株式会社など民間事業者にも館長業務を含め、全面的に管理を行わせることができるとし、指定管理者でも、公民館、図書館及び博物館は館長を必置とし、博物館は学芸員も置く。
しかし、社会教育法第二十八条や地方教育行政の組織及び運営に関する法律第三十四条では、館長や職員の任命を教育委員会が行うこととされていますが、指定管理者が雇う者は公務員でないから、教育委員会の任命は不要といたしました。この文部科学省の法解釈は、憲法、教育基本法、社会教育法を根底から破壊しかねないものでありまして、当時、関係団体からは社会教育機関に指定管理者制度を適用すべきではないという厳しい反対がありました。
その論点は、指定管理者制度が公民館、図書館、博物館などに導入されれば、第一に民間事業者による経営や経費節減等による受益者負担が増大する。第三に営利性、効率性優先による学習の自由が侵害される。第四に指定期間設定による社会教育事業の継続性が否定される。第五に社会教育施設で働く職員の労働条件が切り下げられ、専門性が後退するなど、総じて地域住民の学ぶ権利が侵害されていくことが予想されるということでありました。
本条例改正案は、正にこれらの指摘に私は当てはまるものと考えます。これまで、使用許可は教育行政である教育委員会であったものが、指定管理者の許可に変わり、例えば個人情報の保障も担保されなくなること。また、今、教育委員会が行革大綱の実施計画に沿って成人学校の講座受講料の有料化のみならず、公民館講座の受講料も有料化をする。今まで無料の社会教育目的の公民館使用料、そのものまで有料化する方針をアナウンスするかのごとく、利用者アンケートというものを実施していること。そして、利用住民に受益者負担と称して負担増を押し付けることになること。指定管理者の営利性や効率性を優先して利用料金制にすること。このことが正に住民の学習の自由を侵害することにつながっていくのではないか。
また、社会教育法第二十九条に規定された公民館運営審議会を設置せず、教育委員会が全く関与しない指定管理者である住民自治協議会が決める公民館運営協議会とか運営委員会に変質することによって、公民館の公平性、あるいは公正性、学習権などの保障が果たしてできるのかと。三年という指定管理期間では、事業の継続性も保障されないのではないか。本条例改正案は、極めてこのような重大な問題を内包していると指摘せざるを得ません。
討論の最後ですけれども、私は平成十九年三月市議会で、成人学校受講料を有料化するために公民館条例を改正したこの時点で反対討論に立ちましたが、今そのことを思い起こしています。
私はどう言ったかといいますと、社会教育法では、国及び地方公共団体の任務として、全ての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならないと規定し、さらに社会教育推進のための重要な職務として社会教育委員を設置し、公民館の設置と定期講座の開設、公民館運営審議会などを位置付けております。長野市公民館条例は、この教育基本法、社会教育法の理念、目的を実現するための具体的な条例として制定されております。
このような観点からも、社会教育委員にも公民館運営審議会にも当時諮られないで成人学校受講料を値上げしようとした、そのことは教育基本法や社会教育法の精神を逸脱したものと言っても過言ではないと思います。
民主的な社会教育制度が全ての国民、市民にひとしく保障する学習活動、学びは世界の流れであり、ユネスコの一九八五年、学習権宣言、一九九七年、ハンブルグ宣言にも、学習権なくしては、人間的発達はあり得ない。それは基本的人権の一つで、その正当性は普遍的。学習権は、人類の一部の者に限定されてはならない。成人教育は権利以上のものであり、二十一世紀への鍵である。成人学習は、アイデンティティーを形成し、人生に意味を与えることができる。もし人類が生き延び、未来の課題に応えようとするのであれば、生活のあらゆる領域において人々が情報を得て、効果的に参加できることが必要である。このようにうたっております。
教育委員会が、受講者を講座を買う顧客と考えるような民間カルチャーセンターと比較して受益者負担をと言うことが、いかにユネスコの宣言する学ぶ権利の世界の流れに逆行しているか、お分かりになるのではないでしょうか。そのように申し上げました。
これを紹介いたしまして、私はこの住民の学ぶ権利を保障する公的責務を担っている教育委員会は、社会教育法遵守の立場に立って、今回の条例改正案は撤回し、市立公民館への指定管理者制度の適用について再検証をすることを求めて、私の反対討論を終わります。