2014年9月定例市議会 野々村ひろみ議員
議案第九十八号長野市特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営の基準に関する条例 反対討論
◆野々村博美
議案第九十八号長野市特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営の基準に関する条例に反対する立場から討論を行います。
なお、議案第九十九号、百号、百一号についても関連法案であり、一緒に討論を行います。
来年四月から施行される子ども・子育て支援新制度は、その原型は介護保険と同じで、直接契約を基本とした仕組みです。飽くまで保育は自己責任、市町村は現金給付を行い、その給付は利用料補助という考えです。しかし、この間、保育関係者の粘り強い運動の中で、完全な保育の市場化に一定の歯止めが掛けられ、保育所はこれまでどおり、児童福祉法第二十四条第一項の適用が復活され、保育における権利性が確保されました。そして、全ての申込みは市町村で受け付け、利用調整が行われることになりました。また、幼保連携型認定こども園の移行は強制されず、認定こども園のみならず、保育所、幼稚園は併存することになりました。そのために、大変複雑な仕組みとなりました。
この間、明らかになった制度の基本像は、異なる基準の多様な保育が併存し、施設型給付として保育所、幼稚園、認定こども園、そして認定こども園の中には幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型があります。地域保育給付として、家庭的保育、小規模保育、事業所内保育、居宅訪問型保育があり、財源も大変複雑な仕組みとなっています。
また、利用手続については、保育の必要性の有無と利用時間の認定制度が導入され、また直接契約の仕組みに児童福祉法第二十四条第一項の市町村責任による保育の仕組みが混在することになり、直接契約を導入しながら、全ての申込みを市町村で受け付け、利用調整を行うことになっています。しかし、この利用調整については当面とされており、今後の制度の後退が懸念されます。
また、この間、明らかになった給付は、施設補助から利用者補助になり、公費の使途規制は無くなりました。また、幼稚園、保育所、認定こども園の仮単価が示されましたが、混乱が起きています。
九月十七日に開かれた国の子ども・子育て会議で、全国の幼稚園、認定こども園の意向調査結果が示されました。八割近い幼稚園が新制度に移行せず、幼保連携型認定こども園では、十一パーセントが認定返上を考えていることが明らかになりました。
七月時点の調査結果で、二〇一五年度中に新制度に移行すると回答した幼稚園は六千八百五園のうち二十二・一パーセント、新制度に移行しないとした幼稚園は七十七・九パーセントに上りました。移行しないと回答した園のうち、二〇一六年度以降に移行する方向で検討としたのは十二・九パーセント、同年度以降に状況に応じて判断としたのは四十九・一パーセントでした。
保育所は全て新制度に移行しますが、幼稚園は新制度に移行せず、従来どおり私学助成を受ける道が残されています。新制度に関わる国や市町村の準備の遅れや補助金などの不透明さから、移行をためらう状況が浮き彫りになりました。
五月に公定価格の仮単価が示されて以来、認定返上を検討するところが出ている認定こども園では、幼保連携型認定こども園のうち八十五・六パーセントは移行すると回答したものの、十一・二パーセントは、認定を返上すると回答、幼稚園型の認定こども園でも、六・四パーセントが認定返上と回答しています。
新制度で拡充するとされてきた認定こども園ですが、財源不足から優遇策はとられず、逆に補助金減となる施設が生まれています。都道府県単独のこども園への補助金が継続されるかも不透明で、認定こども園関係者からは不安の声が上がっています。
委員からは、調査結果は残念だとの声が相次ぎ、幼保連携型の認定こども園が減収とならないよう、経過措置を検討すべきだとの意見が出たということです。
幼稚園と保育所との格差が生じ、保育時間が短いのに幼稚園児の保育単価が高く設定され、専門家は、これでは待機児童の解消にはつながらない。しかも、幼稚園児の争奪を引き起こしかねないと指摘しています。
本来、全ての子供たちに質の高い保育、教育が平等に保障されなければならないのに、格差が生じていることは児童福祉法の理念に反するものです。さらに、保育料以外の実費上乗せ徴収を容認しており、保護者負担の一層の増大が懸念されます。
以上、子ども・子育て支援新制度について申し上げてきましたが、移行に当たっての長野市の対応はどうだったでしょうか。国の制度設計の変更が大変複雑になったことや公定価格の公表の遅れなど、長野市だけに責任があるとは言えませんが、幼稚園、保育所を利用している保護者への直接の説明会は一度も持たれてはいません。
また、子育ち・子育て対策特別委員会でも提言書を出し、国基準以上の質の確保を求めました。例えば、地域型保育給付のB型、C型など、保育士の資格がなくても研修を受ければ、乳児を預かることができる仕組みとなっていますが、大変危険です。また、給食についても施設内で調理することが求められますが、搬入も認められています。また、本来子供の施設は、危機管理の視点でもせいぜい二階までとすべきなのに三階以上も容認しています。このような国基準をそのまま認めてしまっていることは大問題です。
他都市では、小規模保育事業について、国基準以上の保育の質を確保するとして保育士の配置や自園給食設備の設置、スペースの確保など義務付けて条例化した自治体もあります。
今議会で関連条例が制定されますが、残念ながらパブリックコメントも行われてはおりません。しかし、今からでも遅くはありません。是非とも関係者、保護者への説明会、意見を聴く会をどんどんと設置をしていただき、全ての子供たちに保育、教育の質の向上を最大限確保できる、そういう仕組みの条例にこれからも改善をしていっていただきたいと思います。
心からその改善を期待して反対討論といたします。