2014年6月定例市議会 原田のぶゆき議員
請願第十五号医療・介護総合法案の撤回を求める意見書の提出を求める請願を不採択とした福祉環境委員会委員長報告 反対討論
◆原田誠之
請願第十五号医療・介護総合法案の撤回を求める意見書の提出を求める請願を不採択とした福祉環境委員会委員長報告に反対の立場から討論を行います。
本請願を不採択とした翌十八日、国民の安心の仕組みを根本から揺るがす医療・介護総合法案が自民・公明両党などの賛成多数で参議院で可決、成立しました。参議院審議で法案の重大な欠陥が明らかになり、政府自ら行ってきた法案の撤回をするなど、ずさんな法案の姿が浮き彫りになる中での強行でした。
本請願審査の際、参考人は意見陳述で、自ら自宅で寝たきりの祖母を介護していたことがきっかけで介護の仕事に就き、十六年間、老人保健施設で通所サービス、高齢者住宅などの介護事業の立上げに関わってきた立場から、法案の問題点を現場から指摘しています。
予防給付では、要支援二でも、週二回程度の通所介護の利用が限度であり、実際は介護保険のサービスに加えながら、更にボランティアや家族、友人、地域の集まりなど、多様な社会の支えで高齢者は元気をもらっていること。つまり、介護サービスの利用あっての予防事業であり、要支援一、二を介護保険から外して地域サロンやボランティアに置き換えることは不可能と指摘。
また、ヘルパーを初め介護の仕事は、医者や看護師と同じく専門職であり、生活支援といっても、掃除、洗濯、買い物といった単品サービスの組合せだけではありません。高齢になって病気や障害を抱え、生きる意欲が損なわれている利用者の葛藤を受け止めながら、高齢者の人生や気持ちを尊重し、生きる意欲と生活の再建に向けて精神的活力を提供する心理、身体両面の支援こそが介護の専門性が生かされた仕事ですと、具体的な事例で介護の重要性を示してくれました。
七十九歳のある方は、脳梗塞で三度も倒れ、足も腕も麻ひが残り、着替えをするのに一時間掛かり、トイレに間に合わず毎回おむつに失禁、部屋から食堂に歩行器を使って歩くのに汗びっしょりになる。この方でも、認定調査で要支援一から二の判定が出たといいます。
法案では、部屋の掃除にヘルパーが使えず、週二回のデイサービスにも行けなくなることを心配しています。要介護認定で要支援一、二の判定が出たということは、介護保険給付で専門職から支援を受ける必要があると認定されたわけです。このようなケースから保険サービスを取り上げることは、保険料を払っている市民のサービス受給権の侵害だと厳しい指摘をしています。強行した法案が、要支援者の訪問・通所介護、保険給付から外し、市町村の地域支援事業に置き換えることが、受給権の剥奪にほかならないとして、現場からの痛切な思いの意見陳述でした。
地域支援事業に移行した場合の専門的サービスは多くとも現状維持、二〇二五年度に五割程度になるという試算が示されました。新たに要支援と認定された人には、ボランティアなどのサービスしか提供されなくなるおそれがあるのです。要支援者への給付費の伸び率五・六パーセントが三・七パーセントに抑制され、二〇三五年度での給付抑制は二千六百億円に上ると国会での議論です。委員会審査の際、国は社会保障予算削減を前提にしている医療・介護のサービスの抑制になることは明らかだ。こうなれば、サービス単価や人件費の切下げ、利用者の負担増につながり、介護サービスを質・量ともに低下させることは明白だと指摘し、理事者にただしました。
理事者は、サービスの後退のないようにしますと答えましたが、そうなれば、専門職の引き続く維持など、自治体負担、長野市の負担がかさむことは目に見えています。撤回以外にないのであります。
次の問題点は、特別養護老人ホームへの入所を要介護三以上に限定することに何の道理もないことです。五十二万人の特別養護老人ホーム待機者のうち十七万八千人は、要介護一、二です。長野市でも、特別養護老人ホーム入所待ちは千六百三十二人、そのうち要介護一、二の方は四百四十人です。こうした方々は今でも入所待ちの行列に並んでも後回しにされていますが、今後は行列に並ぶことすら許されなくなります。多数の方々の入所の権利を奪いながら、それに代わる施設計画は示されていません。
私は委員会で、まずは施設を増やすなど整備の改善が重要であると指摘しました。ここを放置して、介護一、二を外せば、介護難民化、老人漂流社会は一層深刻にならざるを得ません。また、介護のために働き続けてきた職場を辞めざるを得ない人たちも更に増えてくるのではないでしょうか。どの問題をとっても、制度の根幹を揺るがす歴史的大改悪であります。
次の問題点は、上からの強権的な医療計画の押付けで、国民の医療を受ける権利が侵害されることです。都道府県主導で病床の再編、削減を推進する仕組みが作られ、病院が従わない場合、医療機関名の公表、各種補助金や融資対象からの除外など制裁措置をとります。国民皆保険制度を支えてきたのは、質の高い開業医と民間病院、公的病院の献身的な努力と自発的な連携です。強権的なベッド規制は国民皆保険制度の根幹を揺るがすもので容認できません。
病気になって入院しても、早期退院が迫られる、社会問題になっている患者追い出しに拍車を掛けるのが病床の大幅削減です。高齢化がピークの二〇二五年までに二百二万床必要なのに、逆に四十三万床も減らす計画です。しかも、手厚い七対一病床は、今から二年間で九万床も減らすということです。
委員会審査で、ある委員は、うちの方の病院は高齢者でベッドは満杯だと。減らすどころの話ではないと言いたかったのか、そのとおり、今はベッドなどを減らす状況ではありません。しかし、特養に入る必要のある人も含め、病床削減や病床中止を勧告する権限を知事に与え、従わない場合はペナルティーまで科して、患者を在宅に押し戻そうというのが医療分野における安倍自公政権の都道府県主導の病院再建計画であります。
さらに問題は、介護保険は利用料二割負担の根拠が完全に崩壊したにもかかわらず、これを撤回しないことです。政府は、年金収入二百八十万円の世帯では、平均的な消費支出をしても年間六十万円が余るので、二割負担は可能だということを唯一の論拠にしていました。参議院の質疑で、その説明は崩壊し、六十万円余るという説明は撤回され、大臣は反省していると述べました。このような法案をこのまま採決にかけるなど、国会の自殺行為と言うべきであり、撤回しかありません。
経済財政諮問会議で検討されている骨太の方針二〇一四では、法人税減税に合わせて社会保障の自然増抑制がうたわれています。小泉政権時代の社会保障抑制路線が完全に復活しつつります。社会保障のためといって消費税を八兆円も増税したのに、社会保障の拡充には回さず、社会保障の拡充を求めると、財源不足を口実に拒否をし、法人税減税のうち復興税は一年前倒しでやめ、一・五兆円、計画中の法人税減税で四兆五千億円、締めて六兆円もの大企業減税であります。
消費税増税で庶民に負担をかぶせ、社会保障予算は削減、そして大企業へは手厚い減税、これほど身勝手で無責任な政治が許されるはずがありません。この法律が施行されれば、医療崩壊、介護難民という事態が一層大規模に進行することは明らかであります。この道は、かつて国民から厳しい批判を浴び、自由民主党政権の崩壊をもたらしたいつか来た同じ道です。
請願者は訴えています。これまでの介護サービスから後退とならないように、介護に関わる人たちが安心して働き、生活できるよう、実効ある処遇改善を進め、憲法第二十五条に基づき、人権としての社会保障実現をする医療・介護提供体制を構築してほしいと。
これらの願意を酌み、本請願を採択し、国に撤回を求める意見書を提出するよう、議員各位にお訴え申し上げ、討論とします。