2014年6月定例市議会 佐藤くみ子議員
日本共産党長野市会議員団を代表して、請願第二十四号長野市議会の議場に国旗及び市旗の掲揚を求める請願を採択するとした委員長報告 反対討論
◆佐藤久美子
私は、日本共産党長野市会議員団を代表して、請願第二十四号長野市議会の議場に国旗及び市旗の掲揚を求める請願を採択するとした委員長報告に反対する立場から討論を行います。
第一点は、長野市議会の本会議場は、市民の願いや要望を反映させるため、多様な価値観を持つ市民を代表する議員が、自由な議論を尽くす言論の府だからであります。また、議員だけでなく、思想、信条、宗派の多様な市民が、傍聴者として参加する民主主義の府でもあります。しかも、長野市には、さきの侵略戦争で多くの犠牲者を出したアジアの方々を初め、四十八か国の三千三百九十三人を超える外国人の方々が住んでおられます。
本会議場に今でも様々な意見が分かれる日の丸を掲揚することは、市民に国旗--日の丸掲揚の受容を強要することになりかねず、自由な言論の府にふさわしくないものと言わざるを得ません。
第二点目は、日の丸が、過去の侵略戦争のシンボルであったことです。戦争中日本軍は、日の丸を先頭に掲げてアジア各国に攻め込みました。日の丸が侵略の旗印として使われてきたことは、歴史的事実であります。この侵略戦争によって、約二千万人を超えるアジアの人々と三百万人を超える日本人の命が犠牲になったのです。日本が占領した地域には、占領の印としてこの旗が高く掲げられ、また、若者は日の丸の小旗に送られて戦場へと赴いたのです。だから今でも、アジア各国の人々の間には、日の丸といえば、日本の野蛮な侵略と軍国主義の押付けを思い出す人が少なくない状況にあります。
日本と共に第二次世界大戦の侵略国だったドイツとイタリアは、戦後国旗のデザインを変更しています。侵略戦争は間違っていたという反省の証であります。第二次世界大戦で侵略と暴虐のシンボルとされた日の丸を今もそのままに事実上の国旗として扱ってきた国は、日本だけと言っても過言ではありません。
戦後直ちに日本政府は、政権政党であった自民党でさえ、日の丸、君が代をそれぞれ国旗、国歌とすることができなかったわけであります。一九九九年--平成十一年八月十三日、国旗及び国歌に関する法律が、十分な国民的議論を踏まえることなく、しかも自民党や公明党などの多数に頼んでの強行採決で決められました。国民共同の意志として決められるべき国旗を、また国民が親しみを込めて歌うべき国歌をいきなり法案を出しておいて、強行採決するなどという行為は、重大なる誤りだったというべきことです。
国旗・国歌法は、本則二条、附則三項、別記二により構成される法律です。一条で日の丸を国旗と、二条で君が代を国歌と定めましたが、学校行事や国民生活においても、掲揚や斉唱の義務を課すことはできませんでした。その強制は思想、信条の自由を侵す行為であるからです。したがって、国旗・国歌法が成立したことは事実ですが、この法律をもって国民にこれを強要する根拠はどこにもないのです。
現に当時の首相であった小渕恵三氏は、一九九九年六月二十九日の衆議院本会議場において、日本共産党の志位和夫氏の質問に対し、国旗及び国歌の強制についてお尋ねがありましたが、政府といたしましては、国旗・国歌の法制化に当たり、国旗の掲揚に関し義務付けなどを行うことは考えておりません。したがって、現行の運用に変更が生ずることにはならないと考えておりますと答弁し、強要、強制しないことを明言しておられました。
また当時、東京都教育委員会の委員の一人であり、棋士でもあった米長邦雄氏が二〇〇四年秋の園遊会に招待された際、明仁天皇に対し、日本中の学校において国旗を掲げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございますと発言しましたが、これに対し天皇は、やはり、強制になるということではないことが望ましいですねと述べておられます。
国旗、国歌については、強制や上からの指示ではなく、自らの思想、信条、良心の自由に基づいて国民一人一人が自ら考え、自由にその扱いを判断できることが最も望ましい対応と言えます。こうしてこそ、日本は本当の意味で民主主義国家となったことを意味するものと言えます。
第三点目は、安倍首相が憲法の解釈を変えて集団的自衛権の行使を容認する動きを加速させているこの時期に、市議会の議場に日の丸を掲揚することの是非が、採決されようとしている点であります。
私が請願者に対し、なぜこの時期にこの請願を出したのかと問うたところ、遅過ぎた、万一主権が侵害されるときに何もできないのは残念、国家的・国民的意識をまとめなければと答弁されました。
私は、先日、街頭で憲法九条を守ろうと書かれたポスターを掲げ宣伝していたところ、車に乗った女性がそこに入るにはどうしたらよいですかと、車の窓から尋ねるという経験をいたしました。それほど市民が安倍首相の言動に強い危機感と不安を持っていることの現れではないでしょうか。
こうした状況の下で、議場に日の丸を掲げることで市民の不安感、危機感を一層かき立てることになると私は感じます。国際紛争の解決の手段は、武力に頼ることなく徹底した話合いによる平和外交の展開にあると考えるものであります。
請願団体の日本会議については、アメリカ議会調査局でも、二月二十日付けでまとめた議会報告書に安倍首相の靖国神社参拝強行や村山談話の見直し発言の背景にある団体と名指しで警戒をされています。
改憲と侵略戦争を正当化する団体の請願に反対し、平和を求める市民と共に憲法九条を守り、暮らしを守り、平和を守り、安倍首相の暴走に待ったをかける議論こそ、議会に求められている役割だと認識をいたします。
以上をもって、反対討論といたします。