2013年9月定例市議会 小林よしかず議員
請願第十二号新聞に消費税軽減税率適用を求める請願を採択とした総務委員会委員長報告 反対討論
◆小林義和
請願第十二号新聞に消費税軽減税率適用を求める請願を採択とした総務委員会委員長報告に反対の立場で討論します。
日本新聞販売協会の請願は、新聞の社会的役割に鑑み、消費税増税時には複数税率を導入し、新聞には軽減税率の適用を強く願うとの趣旨で、一言で言うなら、消費税増税は認めるが、新聞だけは上げないでということであります。紹介議員や賛同者は、気持ちは分かる、合理性ある請願だと賛成多数で採択いたしました。
それでは、消費税増税を巡る情勢はどうか。安倍内閣は十月予定の臨時国会前に、増税の可否を判断するとしています。しかし、今、増税中止は国民多数の声です。参議院議員選挙後の世論調査でも、増税を予定どおりに実施すべきは二、三割で、中止すべき、先送りすべきが七割から八割と圧倒的であります。
内閣官房参与などの政府関係者からも、予定どおりの増税に反対する意見が出され、これまで増税を主張してきた大手新聞からも来春の八パーセントは見送るべきだ、消費税増税の環境にないなどの論調が出てきました。
消費税増税は、税率八パーセントで約八兆円、税率十パーセントで十三・五兆円、一九九七年の大増税を上回る史上最大規模であります。三パーセントから五パーセントへの増税前の一九九〇年から一九九七年に労働者の平均年収は五十万円増えていましたが、増税で家計の底が抜け、大不況の引き金を引くことになりました。
今回はどうか。一九九七年をピークに労働者の平均年収は七十万円減少、月給が十四か月連続で前年を下回る、物価だけが上がり、暮らしは大変。中小企業は、長期の不況で消費税の販売価格への転嫁も、円安による原材料価格上昇の価格転嫁もできない二重苦で、増税されたら店を畳むしかないと、悲痛な声が広がっているのが現状であります。この史上空前の大増税は、国民の暮らしと営業を破壊し、日本経済を奈落の底に突き落とすことは明らかです。
増税で財政が良くなるという理論がありますが、一九九七年に二パーセント、約五兆円増税した際、消費税以外の税収は増税後三年目に十一・四兆円減少、大不況での税収落ち込みと景気対策の法人税・所得税減税のためであります。
歳出でも、景気対策の名で大型開発のばらまきが行われたと。国と地方の長期債務残高は、増税後三年間で四百四十九兆円から六百兆円へと拡大し、財政危機悪化を加速したのは御存じのとおりです。
今度も自由民主党や財界からは、公共事業の追加や法人税の減税を求める声が増税実施前から出ています。景気悪化で税収を減らし、景気対策のばらまきに増税分が回る、いつか来た道です。
私たちは、消費税は所得の少ない人に重くのし掛かる最悪の不公平税制だと考え、消費税増税には断固反対の立場です。そして、税制の在り方を応能負担の原則に立って改革し、富裕層・大企業優遇税制を改める、国民の所得を増やす経済の立て直し、税収増で財源を確保するなど、消費税に頼らない別の道を具体的に示しています。
今こそ、地方議会として、市民の暮らしや地域の経済を守る。新聞販売店で働く皆さんの生活も守る大局的な立場から判断すべきではないか。長い目で見た経済政策については、消費税という税制、社会保障の在り方、財政危機打開の方途などで意見の違いはあったとしても、増税中止を求める国民多数の声に応え、四月からの増税中止という一点で共同を進めるときではないでしょうか。
増税はしようがない、自分だけ生き残るために軽減税率を求めるなどというような意見書を国に上げるならば、長野市議会史に汚点を残すと言わざるを得ません。
次に、どうしても申し上げておかなければなりません。
請願者は、新聞は公共性が高く、日本の文化の維持と民主主義を支える社会基盤だと述べ、紹介議員の皆さんも、末端を担う販売店も含めた、その社会的役割を強調されました。
では、今、新聞は本当にその役割を果たしているかどうかということであります。
今回の請願の背景には、販売店と表裏一体である全国の新聞百五社、放送二十三社、通信四社が加盟する業界団体の日本新聞協会の動きがありました。日本新聞協会は、消費税増税の動向に敏感に反応しました。昨年三月、新聞への軽減税率を主張し始め、増税法案が可決後の昨年十月、全国の新聞大会で軽減税率適用を求める大会決議を採択したと。そして、今年一月十五日、消費税増税時に新聞に軽減税率適用を求める声明を発表したわけです。
全国の新聞販売店の同業組合である日本新聞販売協会は、実は以前から自由民主党を支援する方針をとり、政治献金が、役員が元新聞記者で構成されている自民党新聞販売懇話会のメンバーに渡っていることは周知の事実です。
この懇話会に、どこからどのような政界工作があったかは容易に想像が付きますが、新聞協会の声明と時期を一にして、一月二十一日に総会を開き、新聞軽減税率実現の方針を確認し、その後、百人を超える自由民主党議員の署名を集め、野田自由民主党税制調査会長に要請したと報じられています。
この間、私どものしんぶん赤旗は、次のような報道をしました。安倍首相と大手新聞社、放送局トップとの宴会が一月七日、渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長と東京丸の内のパレスホテル東京の高級かっぽうで行われたことを皮切りに、翌八日、産経新聞の清原会長、熊坂社長。二月七日、朝日新聞の木村社長。同月十五日、共同通信社の石川社長、この社長は、その後、人事部長の就活女子大生に対するセクハラで、この部長は失職し、社長も失脚をいたしました。三月八日には日本経済新聞の喜多社長、この方も女性問題で週刊誌をにぎわしておるのが事実であります。そして同月十五日、フジテレビの日枝会長、フジサンケイメディアグループの最高責任経営者です。同月二十二日にはテレビ朝日の早河社長、同月二十八日には毎日新聞の朝比奈社長、その後も各社論説委員長、政治部長、解説委員と続いたのです。毎回、高級料亭で二時間以上、この時の政治権力者との会食懇親会の席に権力の監視役であるべき大新聞の社長がくつわを並べる図は、異様であります。
欧米メディアには、現職メディア経営者は現職大統領、首相在任中は接触を控えるのを不文律とする例があります。政治の最高権力者が接触を求めるのは政治的な意図がないはずはなく、無防備に会うのは権力との癒着につながり、不明朗な関係がメディアの信頼性を損ね、ひいては民主主義社会を支える国民の知る権利がゆがめられるおそれがあると考えるからです。
日本新聞協会自身が定める新聞倫理綱領は、国民の知る権利は、あらゆる権力から独立したメディアの存在によって保障されると明記しています。自分たちで決めた倫理綱領に照らして疑問の声が出なかったのでしょうか。
この間、日本新聞協会は一月十五日、消費税増税に当たって、新聞に軽減税率を適用するよう求める声明を出した。昨年夏の消費税国会で、消費税増税を推進する立場から報道キャンペーンを展開し、増税のレールが敷かれたと思ったら、今度は新聞だけは例外として消費税を軽くしてという言い分は、世論の批判を浴びたのも当然であります。
一連の首相と大手マスコミトップとの会食懇談の結果として、新聞に対する消費税の軽減税率適用がほぼ固まったとも、新聞界の一部で伝えられました。日本政治に詳しい米国の政治学者は、都内の講演で、メディアも安倍政権の宣伝紙のようになっている。全く客観性がなく、安倍首相の言っていることを並べているだけだと述べております。
さて、委員会の論議の中で、財政部長からですね、自公の与党税制協議で、軽減税率については十パーセントへの増税時に導入を目指すということになっているとの指摘がございました。それに合わせて、ここに来て、冒頭にも申し上げましたけれども、各新聞の論調に変化が出てきまして、来年の四月の八パーセントへの増税に慎重論を書くようになってきた。社説で消費税増税の環境整備に注文を付け、一般記事では消費税増税による家計の負担増に触れるなどの報道も出てきております。
私は、この新聞社の心変わりは百パーセント譲って、国民の世論と運動が真のジャーナリズム精神を呼び戻させたものとあえて考えたいと思います。社説で宣言したからには、国民の側から国民と共に消費税増税の中止のために論陣を張ってほしいと思います。そうでなければ、たとえ軽減税率が適用されても、国民はもう新聞を買わなくなるでしょう。それは、日本のジャーナリズムの死を意味することになります。
以上、申し上げましたが、この全く時宜を得ず、ロジックも破綻している請願第十二号新聞に消費税軽減税率適用を求める請願を採択とした総務委員会委員長報告に反対し、市民、国民の利益にかなった大局的な立場から、来年四月からの消費税増税を中止させるという一致点での共同の取組を良識ある長野市議会から発信できるよう、心から訴えまして、私の反対討論を終わります。