2013年6月定例市議会 野々村ひろみ議員
請願第七号生活保護法「改正案」の廃案について国に意見書提出を求める請願を不採択とした福祉環境委員会
委員長報告 反対討論
◆野々村博美
請願第七号生活保護法「改正案」の廃案について国に意見書提出を求める請願を不採択とした福祉環境委員会
委員長報告に反対の立場から討論を行います。
最後のセーフティーネットと言われる生活保護に関わる重要な法案を十分な審議も行わないまま、衆議院は採
択いたしました。生活保護法は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基づきとうたっており、保障される最
低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないと明記されています
。この基本理念並びに制度の根幹である無差別平等の原則、必要即応の原則はいささかも揺るぐことがないこと
は審議の中でも確認をされました。字面では何ら変えていないのに、中身はこの基本理念、原則を侵すものとな
っています。
まず、指摘しなければならないのは、保護の申請を申請書の提出が必要な行為と義務付けた新たな規定を設け
たことです。現在でも、窓口で申請意思を示しても、申請書を渡さない、あれこれと条件を付けてなかなか受理
しないといった水際作戦が行われてきました。時にそれが悲惨な結果を生み、申請権を侵害する違法な行為とし
て裁判でも弾劾されてきたものです。
今回の改正は、このような水際作戦を合法化するものであり、許されません。特別な事情がある場合は例外と
するという一文が入れられましたが、厳格化が明文化された影響は避けられないものと危惧します。
次に、福祉事務所の扶養義務者に対する調査権限の付与、また義務を果たしていないと判断した場合の扶養義
務者に対する通知の義務付けは、保護開始の要件とされていない扶養義務の履行を事実上、強いるものになりま
す。親族間に不要なあつれきを生じさせ、親族に知られたくないからと、生活保護を受けることを断念させるこ
とにつながりかねません。
なお、不正受給は厳正に対処していくことは当然ですが、不正受給とされる事案のほとんどは、アルバイト代
の収入の申請漏れなど、ささいなミスによるものです。生活保護費との相殺や不正徴収金の罰則的上乗せは行う
べきではありません。
委員会審査の中でも、不正受給を口実に保護法改正が必要であるという意見が複数出されました。そして、長野市では、その額が三千六百万円とされました。この額だけ聞くと高額に感じますが、全体は四十八億円です。
全体に占める割合は〇・七五パーセントで、一パーセントにも満たない額です。九十九・二五パーセントの方々は僅かな生活保護費でひっそりとつましく暮らしいおられるのです。国全体でも、不正受給とされるのは〇・四
パーセント程度、この中にも悪質なものもあれば、悪質とは言えないものもあります。
生活困窮者自立支援法は、生活保護の見直し並びに扶助基準の大幅引下げと一体のものとして提出されました
。生活保護基準を下回る仕事でも、取りあえず就労という形で生活保護からの追い出し、あるいは水際作戦のツ
ールになるおそれがあります。最低賃金すら守られないような労働条件の下で就労が強要される可能性もあり、
労働者全体の権利の低下につながりかねません。
また、今年五月に採択された国際連合の社会権規約委員会所見が生活保護の申請手続を簡素化し、かつ、申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとることを締約国である日本に求めていることにも逆行
するものです。
昨日の国会、参議院厚生労働委員会では、日本共産党の田村智子議員が申請を窓口で締め出す水際作戦についてただしました。厚生労働大臣は、申請は書類提出が原則と答弁しましたが、同時に村木厚子社会援護局長は、
申請書の提出ではなく口頭でも結構なので、申請の意思を明確にした段階と答弁しています。
田村智子議員が保護法改正によって申請権の侵害はあってはならないとし、申請書類を渡すよう通知を出すべ
きだという追及をしたことに対し、村木局長が自治体に再度徹底したいと答弁しています。
改めて長野市の厚生課窓口で、保護法改正の書類提出を口実にし、申請のハードルを上げ、保護受給が必要な
人を締め出すことのないよう強く要望しておきます。
今回の保護法改悪と合わせた保護基準の引下げは、課税の強化、減免基準の引下げ、最低賃金引下げなどにも
大きな影響を与え、一般国民の生活水準にまで負の連鎖を生み出すことになります。
今、私たちはひた走りに来た経済活動最優先による弱肉強食の社会のありようを見直すべき時代を迎えていま
す。取り返しのつかない福島第一原発の事故、貧困層の広がり、自殺、孤立死が深刻な事態になっている現状を
考えれば、今回の生活保護法の改悪が一層社会の矛盾を広げるものであることは明らかです。
議員各位の賢明な判断を期待し、本請願の採択を心から訴え、私の討論といたします。