2012年3月定例市議会 小林よしかず議員
長野市一般会計予算 反対討論
◆小林義和
37番、日本共産党長野市会議員団小林義和でございます。
議案第1号平成24年度長野市一般会計予算に反対の立場から討論いたします。
3月議会開会中の3月11日、東日本大震災・原発事故1周年の日を迎えました。長野市でも、全国でも、ドイツやフランスやアメリカを初め全世界でも、日本の大災害の被災者を悼み、被災地の復興と脱原発を願う集会やデモが行われました。
私も長野市の集会に参加し、地震発生の午後2時46分には黙とうを行い、脱原発を訴えて市内をパレードいたしました。この日、福島県では県知事名で、東電原発事故を受けて再生可能エネルギーを推進し、原子力に頼らず発展し続ける社会を目指すという脱原発の姿勢を鮮明にした、ふくしま宣言を世界に向けて発信いたしました。
一部紹介しようと思いましたが、議員各位は既にお読みだと思いますので、省略いたしますが、信濃毎日新聞社説は、日本全体の復興の道しるべでもあると書いています。私も同感であります。
さて、今年になってから、議会開会中も北海道、埼玉、東京などで孤立死や孤独死が続発し、大きく報道されました。働く世代のいる家族にまで孤立死が拡大し、高齢化や病気で生活が困窮した人を支える社会保障の仕組みが機能していないことが事態の深刻さに拍車をかけています。被災地では、NHKが仮設住宅などで、既に孤独死や自殺が18件も出ていると報道いたしました。
長野市でも、数年前から団地などで多くの孤独死が発生しており、私ども何度か議会でこの問題を取り上げてきました。ニッセイ基礎研究所の推計では、死後4日以上経過して遺体が見付かった65歳以上の高齢者は、年間
全国の地方自治体の来年度予算は
折しも、長野市は、第4次長野市総合計画後期基本計画と、その下位計画、分野別事業計画等の幾つもの計画がスタートする特別の年度であります。この点から見て、来年度予算案について、主なる問題点を指摘いたします。
第1に、大震災・原発事故の復興の在り方と今後の地方自治の方向性です。
エネルギー政策の基本を引き続き原子力発電に置くのか、脱原発で小規模分散型の再生可能自然エネルギーを普及するのかの質問に市長は、再生可能エネルギーの基本はもちろんだが、原子力発電については、国際政治の現実を見れば、全廃するのでなく、原子力技術を維持できる程度のものは残すべきという中谷巌氏の言葉を紹介された。再質問で市長は、中谷氏の言うとおり、2つか3つは残すことでプルトニウムを保存でき、無防備でなくなる、私の考え方であると明言された。これは正に、核抑止力論の開陳でないかと驚がくした私は、中谷氏の著書、資本主義以後の世界を購入し、読みました。
確かに、一つの章で同じことが繰り返し書かれていました。かいつまんで言うと、こうです。
日本が原子力発電から全面的に撤退してしまったら、核武装の原料になるプルトニウムを保有する大義名分は消失してしまう。そうならないために、原発を2基でも3基でも日本に残す。原子力研究を一切やめてしまうのは、自衛隊も何もかも要らないということだ。国際政治がバランスオブパワーで成り立っているときはいいが、バランスが崩れたとき、日本が核に関する一切の能力を放棄した無防備国であってよいのか。そして、国際政治の現実論では、北朝鮮であれ、中国であれ、イデオロギーの違う核武装国が日本の周囲に存在する。日本が原子力技術から一切手を引けば、日本を取り巻く国際情勢はどう変わるか、日本を素っ裸の状態に置いていいのかという深刻な問題が出てくるうんぬんと述べております。
市長は、この中谷氏の考え方に、私の考えはそういうことだと述べたわけであります。
昨日の信濃毎日新聞、震災1年全国世論調査結果の記事は脱原発80%、原発不信の強さを示す、年代はほぼ無関係、国民の広範囲に浸透、長期的には原発をなくすことを求めている。手っ取り早い原発再稼働を繰り返すなら、政権は信頼を失いかねないと報じていました。
世論調査の8割というのは、圧倒的数字です。市長の原発核抑止力論が政治姿勢だとすれば、市長が編成された来年度の予算の中で、特に平和行政関連予算、世界から核兵器を廃絶し、核兵器禁止条約を求める署名や運動をする平和市長会議、長野市民平和の日のつどいの予算、非核三原則を宣言している長野市平和都市宣言、あるいは中国石家庄市との友好都市推進関連予算の事業とは、根本的に矛盾し、180度違う方向を向いていることになってしまいます。もし、発言について、修正なり訂正なりあるのであれば、本議会閉会挨拶もありますから、発言できるものであります。
第2に、このような原発に対する市長の考え方が原発優先から抜け出し、再生可能エネルギー、自然エネルギーを普及するというエネルギー政策の根本的な転換の障害になっていると言わざるを得ません。唐突にエムウェーブ次世代エネルギーパーク事業が浮上したり、太陽光、バイオマス、小水力を初め自然エネルギーの宝庫と思われ、長野市の再生可能エネルギー活用の可能性の本格的な調査も緒に就く段階であり、全ての政策に環境の屋根を架けるに至っていない要因はここにあると思われます。
長野県は2020年度までに県内の自然エネルギー発電能力を現行より5から15%、2050年度までに15から50%に増加、県内で必要な電力を自然エネルギーを軸にし、地域づくりや経済振興を前面に出した新戦略計画を新年度中に作成します。
福島県は、県内で使われるエネルギー量に対する再生可能エネルギーの割合を、2040年頃には100%まで引き上げる目標を掲げました。全国では既に2010年で52市町村が100%自然エネルギーで自給し、そのうち28市町村は食料自給率も100%を超えています。
このような目標値を長野市も決めて取り組むべきとの私の質問に環境部長は、再生可能エネルギーの可能性調査を踏まえて、普及目標の設定も行い、取り組むと答弁しました。一歩前進です。しかし、新年度に設定する長野県や全国から後れをとっていると言わざるを得ません。
このような観点から、エムウェーブ次世代エネルギーパークについては、当然見直すべきであります。この問題は、先ほど来、修正案の議論がありましたから、私は関連して一点だけ、実はビルメンテナンス業の株式会社オーエンスが指定管理者になっている少年科学センターで起きていた事態を報告しておきます。
昨年8月23日から、今年1月31日まで、文科省管轄下の財団法人つくば科学万博記念財団の放射線等に関する展示物の巡回展、エネルギーラボというものが行われていました。中身は、未来のエネルギー原子力という趣旨の展示やゲームで、正に原発の宣伝そのものであります。人類史上最悪の原発事故と放射能汚染が進む真っただ中、この長野市で半年近くの間に
少年科学センターでは、来館者の感想などは全部財団が持っていってしまって把握していない。ただ、会館の展示案内パネルの正しい知識の学習というところに落書きがしてあり、それが唯一、この展示への市民の疑問を物語っておりました。なぜこういうことが行われていたのか、ここに市政の原発に対する姿勢が表れていると言わざるを得ません。
第3は、箱物建築の大型プロジェクトの必要か不必要か、費用対効果、緊急度等の物差しによる見直し、大型プロジェクトこそ選択と集中の対象にすべきという点であります。一極集中大型化から小規模地域分散型こそ、災害時に強く機能を発揮するという大震災の教訓を生かすのであれば、当然見直さざるを得ないものと思います。
まず、市役所第1庁舎・長野市民会館の建て替えは、修正案で議論されましたので、私からは現在地の合築の矛盾や合併特例債の延長の検討などを主張していた議員の多くがなぜ主張を翻したのか、議会史上に残る疑問であるということだけは申し上げておきます。
第4学校給食センター建設については、物資一括購入によるコストと効率化による大規模化の論理ではなく、地元の農産物、商店街と小規模分散型の自校方式の給食体制を結び付ける地産地消型産業構造、地域循環型経済の構築、これが大震災の教訓だと思います。建設計画は白紙に戻し、自校給食方式の議論を始めるときであります。
次に、ごみ焼却場と灰溶融炉建設についてでありますが、年間約16億円という膨大な運営経費であります。時事通信は廃止を検討する自治体が相次いでいると書き、昨年末、岡谷市、諏訪市、下諏訪町で作る行政組合は、実用性、安全性で灰溶融炉なしのストーカ炉に決定しました。長野広域連合内に検討会を設置し、再検証する時期であると指摘をしておきます。
第4は、冒頭に申し上げましたが、憲法第25条の生存権に立ち戻り、孤独死、孤立死、高齢化、貧困化などに対する対策、セーフティーネット構築と社会的弱者が安心して暮らせる福祉制度と予算の拡充についてであります。
生活保護行政については、ケースワーカー4名増員との方向が示されました。現役世代の受給者増には効果的な就労支援が重要です。ケースワーカーは、1人の人間が自立できたときこそ、仕事の喜びを感じると思います。受給者への就労支援と自立に向けたきめ細かな制度を検討し、予算化するよう求めておきます。
また、新あんしんいきいきプラン21には、高齢者を不安にさせ、元気を奪うような方向性が出されています。おでかけパスポート、老人憩の家、在宅福祉介護料、敬老祝金、配食サービス、はい回高齢者家族支援サービス、老人福祉センター等講座受講料の値上げ、既に実施されていますが、緊急通報システムの有料化、これらの事業の後退は、高齢者の社会参加の足を引っ張り、孤立死や孤独死を増やすことは明らかであります。長野市独自の優れた福祉事業の拡大強化こそ行うべきであります。
第5は、避難所となる市有施設の指定管理者制度の見直しと市職員の体制の強化であります。
市職員体制に関する質問に対して、市長は災害時における非常事態の対応を考えると、組織全体としてある程度の人員のゆとりの備えも必要とおっしゃいました。実際、被災自治体の職員の状況は極めて厳しく、全国の自治体が自らの職場が人員削減をされ、ぎりぎりの中で応援を出しています。国こそ、被災自治体の人的支援を強化すべきであります。
指定管理者制度について申し上げますが、福祉避難所に指定されている福祉施設を初め、市有施設の多くが指定管理者に委託されております。総務省は、2010年、指定管理者制度の適切な運用を通知しまして、総務大臣は記者会見で、指定管理者制度はコストをいかにカットするかに力点が置かれてきた、総人件費の削減として進めてきた結果、官製ワーキングプアを随分生み出した、集中改革プランという法的根拠のない仕組みを全国に強いてきた、集中改革プランに捉われることなく、自治体は業務と職員のバランスを自ら考えて、これから定数管理をやってほしい、このように述べました。
長野市は、職員削減の方針を見直し、また指定管理者制度についても、抜本的な見直しが求められていると思います。
第6に、権堂B1地区市街地再開発事業についてであります。
保留床処分費や自己資金の額も店舗も業務テナントも未定のまま、年間利用者数22万人と推計をしている。これで事業成立の見込みを誰が判断できるのか。権堂再生計画の起爆剤どころか、今、計画自体がトイーゴのような新たな空き店舗や運営の困難を招き、新たな空洞化を生み出す危惧があります。本計画は、凍結すべきであります。
都市計画審議会で、市担当者が保留床処分ができない場合、テナント撤退等の事態があっても、今後、公費投入は一切しないと明言したことを本議会において確認しておきます。
最後に、人権同和政策についてであります。
全校指定の人権同和教育は、現場の声を尊重し、抜本的に見直すべきです。また、国が既に終了した人権同和対策事業は完全に廃止し、人権同和教育は人権教育に、人権同和政策課は人権政策課に名称を改めるよう強く指摘しておきます。
以上、主な点について指摘をいたしました。東日本大震災と原発事故の教訓を改めて深く検証し、来年度予算を見直すよう求めまして、議案第1号平成24年度長野市一般会計予算に反対の討論といたします。