議会報告

2012年3月定例市議会 原田のぶゆき議員

緊急事態基本法の早期制定を求める意見書提出を求める請願
   への反対討論

◆原田誠之
 39番、日本共産党長野市会議員団の原田誠之です。
 請願第1号緊急事態基本法の早期制定を求める意見書提出を求める請願に対する総務委員会委員長報告に反対の立場から討論を行います。

 請願者の団体、アジアと日本の平和と安全を守る長野県フォーラムから提出の請願内容は、東日本大震災における取組の対応に甘さがあったとし、世界では、大規模災害時には非常事態宣言を発令し、救援と復興に対処している。また、我が国のように平時体制で対処しようとすると、被災地で初動対応する自衛隊、警察、消防等が、部隊の移動、私有物の撤去、土地収用等に手間取り、救援活動に支障を来し、被害の拡大につながることになる。さらに、原発事故への初動対応に遅れについても問題があると言っています。
 被災地での初動対応に手間取り、救援活動に支障を来し、被害の拡大につながることとなるとしていますが、私は被災直後の昨年5月に、物資を持って南相馬市に支援に行ってきました。壊滅の漁港周辺を見、放射能により集団で転校を余儀なくされ、すし詰め教室の児童に、文房具を持って激励に行ってきましたが、そこで聞いた話には身につまされました。
 原発事故による放射能汚染危険区域13km以内に住み、避難生活をしながら救援活動している南相馬市の我が党議員は、放射能汚染地域で捜索できない行方不明者を探すために、同市に来た自衛隊員を捜索に案内する者がなく、自ら手を挙げ、案内役を買って出、現地に自衛隊を案内したが、いつの間にかクモの子を散らすように、この議員を置いたまま、知らせないまま、命の綱の無線機まで置いて消えてしまいました。
 ホットスポットで放射能が異常に高くなり、隊員同士は無線で連絡し合い、あっと言う間にいなくなってしまったことに、あっけにとられたと言い、この議員は無理もない、誰でも放射能は浴びたくないからと言いながら、それにしても、市の委任を受け公認で案内している者に知らせもしないで、逃げ帰った自衛隊とは何ぞや。請願文書には、緊急事態基本法がないために手間取り、被害の拡大につながるのだと書いてありますが、この議員は、亡くなった人やその家族のことを思うなら、人助けを任務とする隊員なら、きちんとその義務を果たしてほしい、自分たちだけ逃げればいいわけではないと、自衛隊の人助け、災害支援の裏側を見て、驚きを隠してはいませんでした。

 さて、何よりも請願者は、一番の狙いである憲法を引き合いに、次のように述べています。
 我が国の憲法は、前文に代表されるように平時を想定したもので、外部からの武力攻撃、テロ、大規模自然災害等を想定し、非常事態条項が明記されていないと、憲法に非常事態条項のないことを恨んでいます。
 しかも、昨年3月11日の大震災で、34万人もの被災者、16万人もの原発事故の放射能汚染で福島県内外へ避難し、必死で生き抜こうと苦闘しているときに、事もあろうに、8年も前のことを持ち出し、大震災と絡め、平成16年5月の自民、民主、公明3党による緊急事態基本法が合意されているのに、いまだに制定の見通しがないと怒り、制定を求めています。
 しかも、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件、ロシアの北方領土訪問、北朝鮮の核ミサイル問題などで、国民の安全を脅かしていると、3・11の大災害の対応をてこにして、いかなる努力をしても防ぎ切れない非常事態には、首相に権限を集中をして、私有物の撤去や土地収用法などで、平時体制を制約する非常事態基本法の早期制定を声高に求めております。

 委員会審査の際にも、政府の対応の遅れを問題にする発言がありましたが、大地震を通して、政府や東電の対応の遅れは、政府内にある原発事故調査検証委員会が昨年末の中間報告で、現行法制が有効、適切に行使されなかったことに最大の欠点があったと指摘。非常事態法制など持ち出さなくても、現行法制できちんとやれば、対応できたことを明らかにしています。
 改憲や非常事態法制定に国民が納得しておらず、困ったところに起こった大震災に便乗するようなやり方に、厳しい批判が集中するのも当然であります。

 1960年代の伊勢湾台風当時、この災害の教訓から、国に防災や大災害に関わる全面的な法のないことを反省し、非常事態宣言に類する制度として、災害対策基本法が作られました。
 第1条は、この法律は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災に関し、国、地方公共団体及びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び防災に関する財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図り、もって社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とするとし、この法に基づき災害緊急事態布告や警察法に基づく緊急事態の布告があり、いずれも内閣総理大臣が発することになっているのであります。

 にもかかわらず、なぜこのような政府の震災対応の失政が批判されるのか、未曽有の大規模な自然災害の上に、長く続いた自民党政治による安全神話にどっぷりつかった原発54基もの稼働と、政府や東京電力初め電力業界や経済団体の偽りの想定外による爆発事故で、人の手に負えない事態となり、対応に右往左往し、ついに米軍にまで、この事故の対応は日本には任せられないと指摘される始末でした。緊急事態法があれば、対応できたかのような論調は論外であります。

 指摘しておきたいのは、請願文書の中には、平時体制のままとか、平時を想定してとか、平和憲法に食いついていますが、そもそもこの憲法は、戦争勃発以来、15年も長く続いた日本の市場拡大や資源確保などで起こした侵略戦争で、アジアの人々2,000万人、日本国民310万人の尊い命が犠牲となった戦争でした。
 そのことにより、連合軍によるポツダム宣言で降伏となり、その結果、政府の行為で二度と戦争はしないと、国、政府は自らを縛り、常に平時体制を求める国民の総意で作られた、世界でも例のない平和憲法です。この憲法があったからこそ、66年間、日本は戦争で他国民をただの一人も殺傷することなく、平時という平穏な今があるのであります。

 にもかかわらず、大震災をてこに、民主、自民、公明が進めている緊急事態基本法案は、武力攻撃事態、大規模テロ、大規模自然災害の3つをごちゃ混ぜにし、全体を緊急事態として国民の基本的人権を制約するものであり、このような動きは決して許されるものではありません。

 しかも、中国、ロシア、北朝鮮を国民の安全を脅かす国と決めてかかっています。中国もロシアも、今回の東日本大震災では国を挙げた支援活動を行っている隣国で、今でも物心両面での支援、復旧・復興で大きな力を発揮してくれております。惜しみない支援をしている国に対して、安全を脅かす事態が発生していると決めつけるのですか。4月には、友好都市石家庄市に、超党派で市民とともに、経済交流を含め、日中友好と親善のために出掛けます。その直前に、名指しで安全を脅かす国と決めつけるのは、余りにも非常識極まりないのではないのでしょうか。

 仮に、本請願が採択され、国に意見書が送付ということになれば、公の文書として表に出ます。また、支援している国を敵国と見なすような請願には、被災者も、だしにはしないでほしいと、歓迎しないのではないでしょうか。やむを得ず、国と国との意見の相違があった場合は、粘り強く、平和的に外交手段で、つまり外交交渉、話合いで解決を目指すのが国連の原理、原則であり、最良の道であります。
 北朝鮮問題で、のっぴきならない事態の中でも、アメリカは、6か国協議に参加すれば食料を送ってもいいと、米朝の窓口を開いて交渉を呼び掛け、平和的手段で臨んでおります。極めて理性的で冷静な立場をとっているのであります。

 大震災を引き合いに、武力攻撃、テロを想定した本請願は、委員会では採択され、国に意見書を提出する流れとなっていますが、世界の流れにも、また大震災で避難者が34万人、放射能汚染で苦しんでいる被災者が必死に頑張っている今、その被災地の声にも反するもので、必死に立ち上がろうとしている被災者への冒とくであります。

 大震災から1年の、去る3月11日、福島県の佐藤知事は、ふくしま宣言を発しました。
 「大地震、大津波は、多くの尊い命と穏やかだった私たちの暮らしを、非情にも奪い去りました。原子力災害は、美しいふくしまを一変させました。」と言い、結びに、「私たちは必ず、美しいふるさとふくしまを取り戻します。活力と笑顔あふれるふくしまを築いていきます。このふくしま復興の姿を世界へ、未来へと伝えます。」としております。

 福島、宮城、岩手の被災3県の農協、漁協の県連会長は、大企業への農地解放、農業参入はやめてほしい、水産特区で港を大企業に明け渡すことはやめてほしい、農家や漁師に米や魚を任せてほしいと痛切な訴えであります。

 今、この時期に、武力攻撃やテロを想定した緊急事態基本法は、余りにも不見識そのものではないでしょうか。余りにも問題が多過ぎる本請願の採択はやめるよう、紹介議員初め新友会、公明党の皆さん、議員各位の皆さんの冷静で賢明なる御判断をお願い申し上げ、総務委員会委員長報告に対する討論とします。

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