2011年6月定例市議会での討論 野々村ひろみ議員
[合併特例債の起債期限の延長を求める意見書]に反対の立場から討論
◆野々村博美
28番、日本共産党長野市議団野々村博美でございます。
議会第11号合併特例債の起債期限の延長を求める意見書(案)に反対の立場から討論を行います。
今議会でも、複数の議員の皆さんが長野市役所第一庁舎・長野市民会館の建て替え問題について取り上げました。3月11日という、私たちがかつて経験したことがない大震災と福島第1原発事故を契機に、国民の価値観は大きな変化を遂げています。震災後、結婚をする人が急増し、ブライダル産業が震災特需と言われる状況だそうですが、家族のきずな、地域のつながりなど、大切なものは何か、幸福とは何か、皆が真剣に考えています。
3月11日の大地震発生時は、長野市議会総務委員会が開かれていました。長い大きな揺れに委員会審査も一時中断しました。当時市役所を訪れていた市民は、続々と庁舎を出ていったそうです。
私は、震災直後の3月14日の総務委員会で、このような事態の中で合併特例債が使えるのかどうか。また、市役所第一庁舎については、直ちに地震に備える対策をとらなければならない。それには耐震化を早急に行うべきであり、長野市民会館については既に廃止条例が可決され、市民が使えない状態になっているので、時間をかけて検討すればよいと発言しました。
合併特例債の起債期限の延長を求める意見書案の提案理由は、財源や建設資材を被災地に優先的に投入していく必要があることから、市町村の中には、大規模事業の見直しや事業の先送りをせざるを得ない状況も発生してくるものと考えるとしています。確かに、被災地では延期が必要であり、国もその方針を示しました。
しかし、意見書を提出しようとしている長野市や長野市議会はどうでしょうか。3月議会で鷲澤市長が示した市役所第一庁舎と長野市民会館を合築して建て替えるとした計画にゴーサインを出した議員の皆さんがこの6月議会では、市民会館と市役所の役割は違うと発言し、見直しを求めています。
ここにも3月11日を経験し、大きな変化が起きていることを実感しましたが、しかし見直しを求めた皆さんも合併特例債を当てにして市役所を建て替え、新しくするという立場に変わりはありません。被災地の復興を優先するというならば、合併特例債の延期を求めるのではなく、返上こそを鷲澤市長に求めることが長野市議会がとるべき態度ではないでしょうか。
市庁舎・市民会館建て替えのこれまでの経過は、権堂案から現地案に変更になるなど迷走してきました。既に、合併特例債を活用するための平成26年度しゅん工という期限にぎりぎりの事態です。その上、東日本大震災の影響です。復興財源についても、新たな増税が検討されている中で、大震災後の市民世論は使える建物を壊してばく大な税金を投入することに対して批判と怒りの声が強く、厳しくなっています。この世論の動向は、長野市役所第一庁舎・長野市民会館の建て替えの是非を問う住民投票条例の制定を求める署名活動を大きく後押しするものであり、建て替え計画へ影響を及ぼすやもしれません。
今回の合併特例債の起債期限の延長を求める意見書案が震災復興を願ったものではなく、今なお国難とも言える事態の中でも、箱物行政に固執した結果、出されたものと言わざるを得ません。
委員会審査の中で出されたもう一つの提案理由が、今後の大型事業の借金返済と、合併後の地方交付税の一本算定による地方交付税減額と重なるので、起債延長を要望したいと説明がありましたが、党市議団は繰り返し財政推計を示し、後年度負担が大きくなり過ぎることを指摘してきました。
総務委員会に提案された公明党市議員団も、また賛同した新友会の議員の皆さんからも、この意見書案が市役所第一庁舎・長野市民会館の建て替えのためとは言われませんでした。しかし、長野市の合併特例債の実績を見れば、目的は明白です。長野市は313億円使える合併特例債の満額を使う予定です。
既に194億円については、予定どおり事業が始まっています。この中には、大峰斎場と松代新斎場の計画、北部地域スポーツレクリエーションパークなどの大型事業が含まれています。残りは119億円で、現段階で明らかにされている事業計画は、市役所第一庁舎・長野市民会館の建て替えの100億円です。ですから、この意見書案の起債期限の延長を求める目的は、明らかに市役所第一庁舎・長野市民会館の建て替えが平成26年度しゅん工に間に合わない不測の事態になっても、合併特例債を使えるようにするためのものです。
今、長野市議会がしなければならないことは、合併特例債を使うことを前提に建て替えを強行するのではなく、既に基金として持っている長野市の独自の財源を使って、いかに早急にこの市役所第一庁舎の安全性を確保するかということです。長野市議会として、鷲澤市長にきっぱりと計画変更を求めることを提案して、私の反対討論といたします。