2011年3月定例市議会委員長報告に対する討論 小林よしかず議員
長野電鉄屋代線の実証実験の継続を求める請願を採択せず、継続審査とした委員長報告に対して反対
◆小林義和
27番、日本共産党市議団小林義和でございます。
請願第1号長野電鉄屋代線の実証実験の継続を求める請願を採択せず、継続審査とした総務委員会委員長報告に対して反対し、改めて本議会におきまして採択し、もって議会の信頼を回復することを求める立場から討論を行います。
この請願は、屋代線沿線の松代・若穂住民自治協議会が請願者であり、住民の意向を尊重し、屋代線存続に向けた総合連携計画に基づく実証実験の継続と公的支援による新たな運営スキームによる鉄路の存続を検討するよう求めるとの道理ある内容でした。
しかし、最終局面で思いもよらぬ、請願は継続審査とすべきとの発言があり、請願の継続審査に、新友会2名、公明党2名、無所属1名の5名が賛成し、新友会2名、共産党1名、政信会1名が本議会での採択を求め継続審査に反対をいたしました。5対4で継続審査という結果となりました。この委員会採決の結果は、これまでの議会各会派の見解や公共交通対策特別委員会の取組に反し、住民の思いにも反する立場と言わざるを得ません。
委員会での採決に至るまでのプロセスを簡潔に振り返ってみます。
まず、長野電鉄屋代線存続の問題については、基本的に各会派議員数に応じた委員で構成された公共交通対策特別委員会で調査研究、審議をしてきました。本議会に提出された本請願の取扱い等を巡っては、本議会中、総務委員会に先立ち、3月9日開催の特別委員会後開催をされました特別委員会の委員懇談会において議論されました。
その中で、請願の要望先が長野市長と長野電鉄活性化協議会会長の2者になっていたことに対して、両住民自治協議会が活性化協議会の委員になっている点から、協議会委員が請願要望先として協議会会長を対象とすることには矛盾があるのではないかとの何人かの議員からの指摘を委員会として了承し、共通認識にしました。
そこで、請願者の地元の特別委員会委員や請願紹介議員から、議会として住民自治協議会の願意を酌んで本請願を採択するためにも、長野電鉄活性化協議会会長に対して意見書を提出していただきたいとする部分の削除をした方がいいとの意向を請願者に伝えるとの調整を行いました。
特別委員会委員懇談会では、1名の病気欠席の委員を除く、新友会、共産党市議団、公明党市議団、政信会、市民ネットの各会派委員から、特段異論は出されず、請願者に相談し、一部分の削除をしてもらおうとの結論に達しました。これで総務委員会での請願採択への環境は整ったのではないかと特別委員会委員は誰しもが思ったのであります。
ところが、議会に印刷物として出された請願は、特別委員会委員懇談会で一致を見た修正はされていなかった。この間の事情には言及しませんが、そのまま総務委員会に付託され請願の審査に入ったのであります。
これまでの特別委員会の議論や活動、その内容は周知のことでありますから多くは申し上げませんが、12月には特別委員会として協議会会長及び市長に対して、沿線住民は屋代線の存続に向けて一生懸命活動している、拙速に方向性を出すのではなく、市民が納得できる公的支援の在り方を含めて今後の方向性を検討せよと要望し、2月、協議会が廃止を多数決で決めた後、協議会会長には、廃止の結果を見直し、総合連携計画に基づく施策を推進するとともに、引き続き実証実験を継続するよう強く要請し、市長に対しては、協議会の決定は事実だが、5点の疑義があることから、再度総合連携計画の原点に立ち返り、事業者、住民、行政が一体となって屋代線の再生に向けた議論をすべき、来年度も引き続き実証実験を継続すべきと強く要請をいたしました。
特別委員会の調査研究の結果、問題提起した5つの疑義とは、
- 沿線住民の合意のない中で、多数決で廃止を決めることには問題がある、
- 協議会委員の構成の公平性にも問題がある、
- 地域公共交通の活性化と再生を図ることを目的とする法律との整合性がないのではないか、
- 3年間の総合連携計画を作りながら、1年間しか取り組まず、3か月だけの実証実験で結論を急いだことは問題である、
- 長野市都市内分権における住民自治協議会の位置付けが低いのではないか
等であり、いずれも、いまだにその疑義は解明されないままになっている問題であります。
そして、12月27日には、千曲市、須坂市、長野市の議会の有志によって屋代線を考える議員連盟を設立し、屋代線の存続を願い、沿線地域の公共交通の在り方及び地域活性化に関する施策を推進するとの目的を高く掲げたのであります。平成22年度の事業計画としては、屋代線の利用促進運動の推進に取り組むことを決めました。
また、特別委員会は、2月には出張委員会を松代で開催し、若穂地区住民自治協議会、松代地区住民自治協議会の役員の皆さんと意見交換も行いました。これらの経過は、12月議会、3月議会の公共交通対策特別委員会委員長報告に全て反映しているのであります。
以上述べました議会の活動から判断して、請願文面の一定の修正がされていれば、総務委員会では沿線地域の住民自治協議会が請願者である切実で当然の請願趣旨を酌んで、請願は採択されるはずでありました。
ところが、総務委員会では、総務委員会委員長報告にあったように鉄路をどうやって残すかを考えるのが協議会の役割との賛成意見に対して、協議会の決定は重みがあり、もっと審査をする必要がある、組織として決定した事項に対し、その組織の構成員が請願により、その決定を変えようとすることには疑問がある、該当地区では署名活動が行われており、地元住民の思いはどういうものなのかきちんと見極めなければならず、もうしばらく様子を見た方がよいのではなどの継続審査を求める意見が出されました。
議論はこう着状態となったため、委員の提案で請願採択に向けた努力をすべきとして休憩をとり、請願者や紹介議員と協議して、採択に疑問を持つ委員に応えられる請願文書の修正をすることになったのであります。このことに対しては、委員からは特段の異論は出されず、傍聴していた者は誰もが修正後採択されるものと確信いたしました。
請願の表題の修正はできないことになっているため、そのまま長野電鉄屋代線の実証実験の継続を求める請願として生かされましたが、異論が出ていた、長野電鉄が廃止届を国に出すとの方針は変わらないのだから、具体名の長野電鉄屋代線を一般的な鉄路に置き換え、特別委員会での合意と同様に長野電鉄活性化協議会会長に対して意見書を提出していただきたいという部分を削除し、請願事項から長野電鉄屋代線そのものを残す意味合いとなる、屋代線存続に向けた総合連携計画に基づく実証実験を継続することとの文面も削除することで、修正請願文が出来上がったのであります。
そして、委員会は再開された。傍聴者は誰もが、これで請願は請願者の願意を酌んで採択されるものと確信し、委員会を見守りました。ところが、委員会再開後冒頭に、この問題に関して今まで一言も発言することなく、また委員会の議論や運営に対して全く異論も述べなかった公明党委員が突然、総務委員会委員長報告にあったように文章の訂正があったが、長野電鉄屋代線については状況的に厳しいものがある、しかし、現在地元では署名活動を展開中であり、住民自治協議会の皆さんの気持ちを大事にするという観点から継続審査とすべきであると発言し、早速継続審査とすべきが最初に採決され、5対4で継続審査が決まり、結果、請願は不採択となったのであります。これが大方の予想を裏切った長野市議会のてんまつであります。
これまでの議会の動向から見て、一体誰がこのような結果を予測していたでしょうか。委員会を傍聴し、請願文書を修正した住民自治協議会の役員の皆さんはマスコミの取材を受け、採択されると思い修正した中身がなぜひっくり返されるのか議会に不信感を持つとか継続審査は事実上の不採択、鉄路存続を検討さえしないのは非常に残念と、厳しい感想を述べられておりました。
しかし、多くの住民に支えられた住民自治の運動は不屈であります。昨日、若穂地区住民自治協議会、松代地区住民自治協議会は、2週間余りで集めた屋代線の存続を求める署名2万3,513筆を添えて、市長に、沿線住民の声を重く受け止めてほしい、バス代替ありきではなく、鉄路を残す形を考えてほしいと訴えられたのであります。2万3,513人は、若穂地区、松代地区の人口の74%、有権者でいいますと89%であります。
委員会で継続審査を求めた議員は、該当地区では署名活動が行われており、地元住民の思いはどういったものなのかきちんと見極めなければならず、もうしばらく様子を見た方がよいのではないかと述べました。
委員会再開後に、沈黙を破って継続審査の立場で一言だけ発言した議員は、地元では署名活動を展開中であり、住民自治協議会の皆さんの気持ちを大事にするという観点から継続審査とすべきなどと言いました。これらの議員の皆さんにお聞きしたい。地元住民の思いとは何か、皆さんの気持ちを大事にするとは何か。
そして、屋代線を考える議員連盟には長野市議会全ての会派から議員が加盟しています。名前は申し上げませんが、総務委員会で請願を継続審査にした議員も2名加わっております。そして、屋代線の存続を願うこの議員連盟には、新友会、日本共産党市議団、政信会、市民ネットの各会派の代表者の皆さんを先頭に、公共交通対策特別委員会委員長を含めて30名の長野市議会議員の名前が登載されているのであります。
この請願を採択し直せるのは、この本会議だけであります。総務委員会委員長報告の中で、この請願の継続審査を決めた部分だけに関わって委員長報告を一旦否決し、改めて請願部分について本会議において採決を行うことを求めます。
地域住民の暮らしと命をつなぎ、80年の歴史と文化を運ぶ屋代線存続のために、地域を挙げて日夜頑張っておいでの若穂地区住民自治協議会、松代地区住民自治協議会の皆さんの思いや気持ちに応える長野市議会に再生するチャンスは、この瞬間であります。
失いかけた議会への信頼を回復する機会は今であります。取り分け、主体的に議員連盟に加盟された議員の皆さんの良識を心から信頼いたしまして、私の討論を終わるものです。