2010年6月定例市議会 阿部孝二議員討論
生活保護の老齢加算の復活を国に求める請願を不採択とした
福祉環境委員会委員長報告に反対の討論
26番、日本共産党市議団阿部孝二です。
請願第11号生活保護の老齢加算の復活を国に求める請願を不採択とした福祉環境委員会委員長報告に反対の討論を行います。
70歳以上の高齢者などの老齢加算が2006年==平成18年に廃止され、保護費が20%前後減り、葬式など社会のお付き合いができない、食事を減らす、新聞をやめるなど、深刻な影響が出ている。高齢になれば、良質で消化のよい食事が必要、寒さ、暑さに対する特別な需要にこたえるとしての老齢加算でした。憲法では、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、憲法第25条を保障しています。生活保護基準の切り下げは、国民生活全体の水準を押し下げることになります。
鳩山前内閣は、母子加算を復活させました。請願者は、同じ理由で廃止された老齢加算を復活させない道理はありませんと、老齢加算を元に戻してくださいと請願しています。
委員会では、不採択として、厚生労働省の専門委員会は消費支出額全体でみた場合、70歳以上の高齢者について老齢加算に相当するだけの特別な事情があるとは認められないため、加算は廃止の方向で見直すべきと報告した。それに基づき国は加算を廃止した。現在の対応は妥当である。
福岡高裁では違法との判決も出たが、同様の訴訟は全国各地で争われている。先月の東京高裁の判決は、廃止はやむを得ない選択で、憲法違反に当たらないとした。国の財政状況も大変厳しく、廃止はやむを得ないとの意見が出され、またさきの福岡高裁の判決も踏まえ、他の裁判の動向や全国的な議論の状況を見定める必要があるので、いったんここは継続審査とした方がよいなどの意見も出されました。
老齢加算とは、1960年から40年以上行われてきた制度、高齢者は消化吸収がよい食品、暖房、御近所や親せきの訪問、墓参りなど、ほかの年代に比べてお金がかかることから設けられたものです。生活保護の基準が低過ぎる中で重要な役割を担ってきました。
しかし、社会保障予算を毎年2,200億円削減するとした当時の自民党・公明党政権は、老齢加算を04年==平成16年4月から削減し、06年4月から全廃しました。長野市では、平成15年4月1日、16,680円、18年には支給ゼロになりました。
老齢加算廃止は、憲法第25条の生存権に反するとして、廃止処分取消しを全国8都府県で約100人が裁判に訴えています。これまで4地裁と東京高裁で、原告の訴えを退ける判決が出されていましたが、6月14日、福岡高裁で初めて廃止処分を取り消しました。国と市は相談して、最高裁判所の判断を仰ぐとしています。
福岡高等裁判所判決では、老齢加算廃止で生活扶助の支給額が約20%減らされた都市部の単身世帯と指摘、生活保護は国の恩恵ではなく、国民の権利と認めた上で、正当な理由がなければ、既に決定された保護を不利益に変更することがないとした生活保護法第56条に反するのかを検討しました。
厚生労働省の専門委員会の中間取りまとめ2003年12月16日は、老齢加算の廃止の方向を打ち出す一方で、次のことを求めました。高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して、最低生活水準が維持される必要がある。生活水準が急に低下することのないように講じるべきである。ところがわずか4日後の12月20日に、小泉内閣の下で老齢加算が3年間で全廃されました。
判決では、中間取りまとめが求めたことを十分考慮せず、老齢加算を廃止したことは、社会通念に照らし、著しく妥当性を欠いたものと指摘、正当な理由のない保護基準の不利益変更であり、生活保護法第56条に反し、違法と断じました。
長野市では、現在70歳以上の保護を受けている方が598人います。平成15年4月1日の時点で、16,680円が老齢加算として支給されていました。財政負担は、市の負担が四分の一、国は残りの四分の三、市の負担額は約2,992万円と聞きました。市財政を圧迫しているという議員さんがいましたが、配当所得者の税率は20%になっているが、軽減税率の10%の実行です。それも所得税、市県民税合わせての税率です。この軽減税率によって、市税収入が1年間で約9,600万円減収になっています。この税率を元に戻すだけで、3年分の老齢加算の負担分が出てきます。
憲法第25条では、すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する、国はすべての生活面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上と増進に努めなければならないとしています。この間、夏の暑さでクーラーがなく死亡した例があり、クーラーの設置も行われました。老齢加算の廃止で食生活、おふろなどの制限、近所付き合いや老人会、冠婚葬祭などの制限を余儀なくされています。
憲法を国がきちっと守り、誠実に実行させ、老齢者が安心して暮らせるために請願の採択を全議員に訴えて討論を終わります。