初めに、浅川の治水問題に関連して質問します。
村井県政が発足しましたが、県民の県政改革への思いは消えてはいません。脱ダム宣言に基づく県下九か所のダム建設の中止など公共事業の見直し、五年連続で借金を返済し、全国二番目の財政難を克服しつつあるなど、財政改革も進められました。選挙の結果は、新知事を選んだ人もそうでない人も含め、この改革は元に戻してほしくないが県民の多数であります。
取り分け脱ダム宣言によるダム建設中止は、県内はもとより全国的に評価の高いものとなっており、今回の選挙は、この改革を否定したものではありません。新知事も選挙中に、旧来の県政に戻そうと思って私を担いでいる人は必ず後悔すると改革継続の姿勢を示し、さらに、浅川の治水についても、専門家や流域住民の意見を聴くなど、慎重に対応したいとしています。これまで長い間、県民と共に議論を重ね、積み上げてきた浅川の治水問題の成果を生かし、鷲澤市長は県と共に国との調整に協働で当たるなど、賢明な対応を求めるものであります。見解を伺います。
次に、改定された河川法について伺います。
今、国直轄や地方の河川など、全国でダムの建設中止など河川整備計画の見直しの動きが強まり、改定された河川法に基づく整備計画で改修が始まっています。ダム建設にはばく大な投資が必要なこともあり、河川のいっ水、遊水地の設置など、国自身が新しい法に基づいて下諏訪ダムのように河川整備計画の作成に当たり、二十年間で基本高水を順次引き上げる計画で改修をするなど、一定の時間をかけた河川整備計画を認知しています。国の基本政策についてどう受け止めているか、見解を伺います。
次に、長野市の浅川流域の降雨量の試算と基本高水問題について伺います。
市長は、浅川流域の確率降雨量が一日当たり百三十ミリメートルから百三十四・九ミリメートルに上昇したことを発表し、さらに、この数値は浅川流域がますます危険になったことを示しているとし、県は住民の安全を値切らずに、実現可能な治水対策を示してほしいとコメント。また、浅川の基本高水は四百五十トンを上回るのではないかとも言っています。住民の安全を値切らずとは、四百五十トンを超える河川整備計画をすべきと言っているのか。
今、専門家の間では過大な基本高水の設定でダムが造られ、河川の環境悪化や超過洪水による危険性の増大が指摘されています。
それらを受け、一九九七年に河川法が改正され、河川環境の整備と保全が盛り込まれ、住民の意向が重視されるようになり、土地利用も考慮され、河川の特性に応じた流域対策を検討、かすみ堤や遊水地により洪水やはんらんを防ぐことも考えるというような、明治以来の治水方針の大きな転換が提起されているのです。
また、超過洪水には被害を分散させて、水害が大きくならないように、総合治水対策で安全性を追求する、こうすれば現状より小さい適正な基本高水流量を設定することも可能で、意義あるものとしています。基本高水は高い方がいい、ダム建設先にありきは時代にそぐわないのではないでしょうか。見識ある答弁を求めます。
次に、超過洪水を補う遊水地について伺います。
先日、新潟県土木部の案内で、平成十六年七月の豪雨により死傷者を含む大きな被害を受けた五十嵐川と刈谷田川の現地調査を行ってきました。
注目したのは、刈谷田川流域に設置計画の遊水地であります。降雨確率二百年から三百年の大雨で、ダムはあっても満水で、なきに同然であった。地滑りが心配で新たなダムは造れない。下流で水を逃がす以外ないとして、水田五か所で九十ヘクタール、高さ二メートルから三メートルで百八十万トンから二百七十万トンの遊水地を計画、用地は売買価格の二割から三割の費用で永久使役権を行使し、以降は被害に遭っても補償なし、土砂が流入の場合は県が責任を負うとしています。これは、国、地方など既に全国九十か所で行われています。この手法を生かし、県と協働でダムなしの治水計画を技術者レベルで検討してもいいのではないでしょうか、お伺いします。
次に、大雨による浅川右岸の地附山地区の地滑りにかかわり伺います。
七月の異常な大雨は、最大二十四時間雨量で百三ミリメートルとなり、地下水位が上がり、この影響で七月十八日に地滑りが発生しました。ダム建設地周辺は平成七年、十六年、十八年と大雨のたびに地滑りを起こしている所であります。現地を調査しましたが、浅川右岸ダム予定地下流で深さ五メートルから六メートルの大きなブロックが動き、約一億円余で対策工事が行われています。このダム予定地一帯の地質は、地附山地滑りを引き起こした裾花凝灰岩で、粘土質の極めてぜい弱な一帯です。
奈良県川上村に建設された大滝ダムは、地滑り地で危険であり建設は無理だと警鐘し、反対していたにもかかわらず、国は建設を強行しました。しかし、貯水の後、地滑りが発生し、家がひずみ、多くの住宅が避難することになりました。地滑りの対策工事費にばく大な税金を投入し、補強工事をしています。今にして思えば、地滑り常襲地帯の浅川にダムの建設はしなくてよかったが実感ではないでしょうか。見解を伺います。
次に、排水機場の能力アップについてです。
七月の大雨により千曲川は増水し、河川敷のリンゴなど大被害となりました。合流点の樋門は閉められましたが、内水による被害は最小限で食い止められました。排水機場のポンプも順調に稼働したこともありました。
しかし、かねてからの要望であります農業用の四十四トンのポンプの能力アップは緊要です。また、内水災害最大の要因は、千曲川の改修の遅れであります。しゅんせつを初め早期改修を、県と共に国への強力な要請が求められております。お答えください。
次に、浅川の土砂しゅんせつについてであります。
二十三号台風や度重なる大雨で上流から中流、下流域を含む浅川全体の流入土砂のたい積は相当なものです。しゅんせつは始まっておりますが、県への一層の要請を求めますが、お伺いいたします。
市長(鷲澤正一君) |
原田誠之議員さんから御質問の浅川治水問題についてお答えいたします。
まず、浅川治水問題において、県と共に国との調整に協働で当たるようにとの御質問についてでございますが、浅川は古くから幾度となく洪水やはんらん、土石流などを繰り返し、流域沿川に大きな被害をもたらし、尊い生命や貴重な財産を奪ってまいりました。安全で安心して暮らせる抜本的な治水対策は、沿川住民の長年の悲願であります。
平成十三年二月の知事による一方的な脱ダム宣言により浅川治水事業は休止され、平成十六年になってようやく河川改修工事のみが再開されたところでございます。ダムに代わる浅川の治水対策案として、県から昨年十一月に河川整備計画原案、今年二月に内水対策案が示されましたが、その河川整備計画は今日に至ってもいまだ国の認可に至らず、流域住民の合意も得られていない状況にあります。
村井知事は、当選後の会見で、ダム建設を中止した浅川の河川整備計画案について、「脱ダム宣言は周辺住民に満足感を与えるものなのか」と疑問を呈し、「知見を蓄積している人の知恵を総合的に勘案し、判断していく」と述べております。しかしながら、現時点においては県としての方針は、まだ固まっていない状況にあるとお聞きしております。
市といたしましても、今後県から提案される治水対策について、脱ダム宣言以前から今日まで積み重ねた議論も踏まえ、ダムも一つの選択肢として技術的見地からのかっ達な議論を重ね、流域住民が納得できる河川整備計画を早期に策定することが事業を進める第一歩となりますので、そのための国・県との協働を初めとする努力は惜しまないものであります。議員さんおっしゃるとおり、県と共に国との調整に協働で当たってまいります。
次に、改定された河川法に基づく河川整備が始まっていることをどう受け止めているかとの御質問につきましてお答えをいたします。
河川法は、明治二十九年に治水を目的に制定されました。昭和三十九年には利水を加えての改正があり、平成九年には新たに環境と地域の意向を反映した河川整備計画を導入する基本方針が示されております。
浅川治水につきましては、河川法の趣旨に基づき、住民の生命、財産を守る責務のある自治体の長として、安全で安心して暮らせる環境を実現するため、平成七年、国が認可した全体計画で示されている治水安全度で、計画的かつ早期に治水安全度の向上を図れる河川整備計画が策定されることが肝要であると考えております。
次に、浅川流域の降雨量の試算と基本高水問題についてお答えをいたします。
浅川流域の雨量変化につきましては、以前の記者会見で申し上げましたように、浅川治水の全体計画認可時点に算出されている昭和元年から六十五年間のデータに、平成十八年七月豪雨までの資料を加えて試算しましたところ、百分の一確率の降雨は当時の百三十ミリメートルから百三十四・九ミリメートルに変化が見られるということでございます。このことは、浅川流域においても超過降雨の危険性が高まったことを示していると考えられます。
また、気象庁から出ている異常気象レポートでは、一日当たりの降水量が百ミリメートルや二百ミリメートル以上の大雨の出現数については、長期的に増加傾向が見られるとしており、また、国土交通省の資料においても、一時間に五十ミリメートルや百ミリメートルを超す集中豪雨が増加傾向にあり、特に時間雨量百ミリメートル以上の発生回数は、近年の十年間は昭和五十年代の二倍になっており、治水上リスクが増大しているとなっております。
以上のことから、今後、異常降雨が増えるという予測を踏まえ、住民の生命、財産を守る上から基本高水四百五十トンは変更すべきではないと考えております。
浅川の治水対策においては、ダム建設先にありきという考え方ではなく、治水安全度を完全に満たすためにはどの手法が最善であるのか、協議中の整備計画がいまだ国の認可に至らず、住民の合意も得られない現状を踏まえて、技術に裏打ちされた現実的な計画となるよう、内水における総合治水対策も含め議論していくことが重要であると考えております。
私からは以上でございます。 |
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建設部長(和田智君) |
私から、浅川治水問題のうち何点かについてお答え申し上げます。
初めに、超過洪水を補う調整池により、ダムなしの治水計画の検討をすべきとの御質問についてお答えいたします。
新潟県の信濃川水系一級河川刈谷田川や五十嵐川は、平成十六年七月十三日、新潟・福島豪雨において、梅雨前線の停滞により上流域では二十四時間で四百ミリメートル以上の降雨を記録し、甚大な被害が発生しておりますが、その原因は異常な降雨により、これまで定めていた計画基本高水量を大幅に上回る出水があったため被災したものであります。刈谷田川においては、現在、河川の改良復旧を実施中とのことで、計画される遊水地は広大なものであると聞いております。
浅川においてダムに代わる遊水地の計画については、豊野地区等において広範な農地を必要とし、関係する地区住民からは営農等の生活基盤が失われるとして過日、県に計画反対の請願書が提出されております。
併せて、遊水地を含めた現在の河川整備計画案は、国の認可も受けられない状況にあることは周知のとおりであります。遊水地計画は、その流域の土地利用の状況等に適合するものかどうか、慎重に検討されるべきものであると考えております。
次に、浅川右岸の地滑り等によりダム建設をしなくてもよかったが実感ではについてであります。
平成十六年に上松の南浅川合流部の下流右岸側で起きました地滑り及び隣接する区域の地滑りにつきましては、それぞれ県で対応しておりますが、ダム建設予定地付近の地質につきましては、これまで地質の専門家による地すべり等技術検討委員会において、ダムサイトの安全性の検討がされ、大規模地滑りや地震による地滑り発生の心配はないという報告がなされております。
なお、その後、県が平成十三年に設置した治水・利水ダム等検討委員会や、この委員会の一部である浅川部会においてもダムサイトの安全性については、多くの議論がなされておりますが、市といたしましては、ダムの安全性を疑問とする委員からの意見にかかわらず、安全性の確認は当然のことであり、今後その地点に施設を造るとした場合には、安全を確認するための十分な調査は必要であると考えております。
今回の十八年七月豪雨においては、全国各地で多くの人的被害を受けておりますが、この災害に共通していることは、砂防等の施設が存在していなかったことであります。近年の降雨状況や本市の地勢から、いつ土石流等が発生しても不思議ではありません。尊い命や市民の財産を守るため、大局的見地からしっかりとした議論を踏まえた上で治水対策を施し、本市の将来に貢献することが我々の責務であると考えております。
次に、浅川排水機場の能力アップと千曲川のしゅんせつを含めた早期改修の要請についてお答えいたします。
浅川排水機場の能力アップにつきましては、地元の長沼・豊野地区の皆様からも強く要望されており、市としましても下流地域の浸水被害を軽減するために必要であると考えており、老朽化している第一機場の更新も含め、ポンプ能力七十トンへの増強を河川整備計画の内水対策に位置付け、早急に整備されるよう県に求めてまいります。
また、千曲川のしゅんせつ及び早期改修については、治水における根幹的な事業との位置付けを持ち、千曲川改修期成同盟会など様々な機会を通じて国に要望しているところであり、今後も継続して実施してまいりたいと考えております。
次に、浅川の土砂しゅんせつについてでありますが、市では毎年、河川の管理をしております県の浅川改良事務所へしゅんせつの要望をしております。今年度、田子川合流点下の区間はしゅんせつが完了しており、中央橋下支川の南郷区間は近々に発注予定と聞いております。しゅんせつを行うことによって河川の流水断面を確保することは、維持管理上特に重要なことでありますので、今後も状況に応じて随時県に要請してまいりたいと考えております。
私からは以上でございます。 |